ロレッタブログ

生きていく私 - 2009.02.21

確定申告がはじまっているというのに、ついつい本ばかり読んでしまう甲原です。
やらなきゃやらなきゃ、と思いながら、なぜ今日はスコーンを焼いてしまったのでしょうか?
そして、なぜ図書館に行ってしまったのでしょうか?
このようにして、手当たり次第に乱読する日々は懲りずに続いておりますが、最近とても面白かった本をいくつかご紹介。
もともとこの方は好きなのですが、学生時代に読んだものを再読。
すると、なんだか共感の嵐ではないですか。それほど当時の自分と今の自分が変わった、ということでしょう。
宇野千代`生きていく私‘

「平林たい子っていい人だなあ」とか、「なんだよ尾崎士郎ってこんなやつだったのか!」とか、「梶井基次郎はやっぱり文章同様に儚い人だなあ」とか、「瀬戸内寂聴は晴美の時と変わらずやっぱりお茶目で気風が良い!」とか「とにかく明治・大正・昭和初期の日本純文学はこの一冊を読んでから再読すべし!」と思うほどに面白い!!
たとえば、中学生に日本純文学史を「梶井基次郎=檸檬」「谷崎潤一郎=細雪」と丸暗記させる前に、まずこの自叙伝を読ませたほうがずっと話が早い、と思うのです。
「どんな大文豪だって、同じ人間だ。」という目線で物事を知れば、なんだって興味は沸いてくるもの。
夏目漱石はあばた面で悩んでたとか、芥川なんて神経衰弱の自殺だし、森鴎外と川端康成の書いてるものは結局エロじゃん、谷崎の‘癇癪老人日記‘は自分のことでしょ?とか。丸暗記よりはるかに理解は深まって、血となり肉となるのでは?
ほんと、つめこみ教育なんて、意味ないですねー。
山田詠美さんも、「わたしが先生と呼びたいのは宇野千代先生だけです」とおっしゃっていましたっけ。
ロレッタのお客様にも、山田詠美さんの大ファンという方がいらっしゃって、こういうつながりって、なんだか言葉にはうまくいえないほど嬉しいつながりです。
個人的に一番気に入ったくだりは、情死が未遂におわって未だ首に包帯を巻いた東郷青児と乾いた血がまだべったりとついたままの布団で一夜を過ごすくだりが一番いいですねー。
この情死事件の話を「私の書いたものの中で、一番面白い」「一番売れた」という‘色ざんげ‘もこれから再読してみたいと思います。
東郷青児が「君はこの話を聞きたくて、僕と一緒にいたんだね。」というくだりも、とても好きです。
東郷青児の絵とクラシックにブルーの照明が名物の京都の喫茶‘ソワレ‘まではすぐ行けないけれど、西新宿の東郷青児美術館には近いうちに行ってみようっと!
(「だから確定申告はどうした」とか言わないでくださいね。)