ロレッタブログ

「限界論」石川直樹さんと - 2011.11.20

今週も1泊2日の関西出張でした!
甘えん坊のにゃん様は、ちょうどお店の定休日が重なった相方に面倒をみてもらって、早朝から新幹線でまずは新神戸で仕事。その後は肥後橋で開催のこのセミナーに出席してきました。

宗教人類学者 植島 啓司
写真家 石川 直樹


■講座内容
よくスポーツ選手が自分の限界を感じたと引退するときに口にするけれど、いったいその場合の限界とはどのようなことを指しているのでしょうか。理由がけがや病気なら仕方がないと思いますが、そうじゃない場合にはいったい何が基準となるのでしょう。ましてや知性とか頭の回転のよさとか感受性で勝負する研究者やアーティストの場合はどうでしょう。
2000年北極から南極 を人力踏破、2001年七大陸最高峰登頂を達成した石川直樹氏と宗教人類学者の植島啓司氏による対談を通して、人間のもつ「限界」について考えてみたいと思います。

石川さんは私と同い年34歳!!エベレストを登って実感したのは、生物として人間は6400m以上の高地では順応できないので、自分の限界は7300mが限界だということ、そして夜眠る時も酸素マスクが必要で、食欲も性欲も排泄も、もはや生きるだけで精いっぱいなのでそういう気持ちも感じられないのだそう。排泄は人目もはばからずしてしまうので、人間のいやなところが見えて、僕にとってはとても嫌な場所、と語っていたのが印象的でした。

エベレストは2回の登頂とはいっても、同行する山岳民族のシェルパ族にはもう20回も登頂している人もいるのだそうで・・・。そのの一番てっぺんの「頂上」は、たったの畳2畳分くらいしかない。
そして、写真というフレームに切り取られた部分には写らない、例えばテントの隅っこにたまっていた糸くずの事や、この缶詰を食べた等文章で記すことで、旅の記憶を支えているのだそうです。確かに写真もすばらしいれど、断片的なメモや言葉から呼び起される膨大な記憶や映像、というものもありますよね。


そんな話を聞きながら、個人的にとっても気になってたまらなかったのが、石川さんのエベレスト持参物にあった「日焼け止め 60+」!!!!
どんな皮膚をしているのかなー、やっぱり日焼け止めなしだと顔の皮はべろべろにむけるんだろうけど、でも登山中にリュックを開けて日焼け止めのこまめな塗り直しなんてできなさそうよねえ等々、興味と想像が巡ってしまい、完全に職業病です。(笑)
対談の後に質疑応答があったので、すかさず手をあげて質問したところ、それまで深遠な質問ばかり続いてなんだか張りつめた空気だった場内が一気に笑いで緩んでしまいました(笑)。でも、こういう一見どうでもよさそうなくだらない質問は大切だと思います。(自画自賛)
一週間くらいで日焼けした色はさめていくとか、塗り直しはできないけど塗らないとべろべろにむけて前に大変だったのでやっぱり必要、実感としてはビタミンBが皮膚の回復効果的で特にチョコラBBがよかった、などなどボリュームたっぷりに回答をいただきました。ちなみに、「(登山で)どのくらい体重は減るんですか?」と聞くと、「いや、エベレスト登頂しても、そんなに10キロも体重は減らないですよ。」ということでしたが、「体脂肪は一桁」やっぱりね!!!!!

石川さんの祖父は作家の石川淳。(←大学の講義で「焼け跡のイエス」を論じた記憶がある程度)

「この地球を受け継ぐ者へ人力地球縦断プロジェクト「P2P」の全記録」の文体と、ご本人の淡々とした喋りが意外すぎるほどのギャップで驚愕したのですが、「人の跡を辿ってるだけですからね」なんてさらっと口にしていて実に謙虚。

前回の名越康文先生のセミナーは、メディアで拝見する淡々とした喋りとリアル名越先生の熱い語りのギャップに驚いたのですが、今回はまた逆の驚きでした。


「今生きているという冒険」でとても感動した‘スターナビゲーション‘の話や、熱気球が燃料が足りなくなって太平洋に落ちて海水が中に入ってきて徐々に海面が上がっていく(沈んでいるのがわかる)なか、「パナマの貨物船に拾われたんですけどね」と淡々と話す様。
いやいや!!!!あの本を読むと到底そんな風に冷静に話せる事態じゃないですから!!!!とりあえず、みなさまぜひ読んでください。ぜひ、ぜひ。


その後、最終新幹線に向けて淀屋橋までダッシュする石川君を見送り、我々は植島先生を囲む吞み会へ。それにしても石川さん、当日にブータンからバンコク経由で関空に帰国→大阪でセミナー→最終便で東京、って相当しんどいスケジュールだったのではないかと思うけれど、そのぐらいの体力がないとエベレスト登頂なんてしてられないのでしょうね。