ロレッタブログ

正しいスキンケア事典/角質層に色のついたメラニン色素は存在するか? - 2010.10.28

「角質メラニンを取って美白する」ことをうたう製品がありますが、そもそも角質層には色のついたメラニンは存在しません。

しかし、「肌についた色、つまりしみ・そばかす・焼けた肌色をはやく白い肌に戻したい、取り除きたい」という心理に訴求するため、「角質メラニン除去」をうたう製品がしばらく前から登場しています。
また、そうした製品を使う際に、「早く取り除こう」として、お手入れの際に強くこする方も増えます。
表面の角質を取り除いても、しみ・そばかす・白い肌にはなりません。
黒人の人がいくら肌をこすっても、白人にはなりませんよね?
ロレッタを初めて訪れるお客様の中にも、「角質メラニンを取り除く」という表現を真に受けて「間違ったお手入れ」をくりかえしたために、表皮が荒れ果てた真っ赤な顔で来店なさる方がおられます。
色白肌にあこがれる方が多い日本では、この誤解で肌を荒らす方は多いように思います。

共著書の正しい読み方(その2)
( 解説 )
この共著書では、自分のコメントについては自分の知る限り正しい情報を入れ、市場で思われている間違った美容情報や化粧品、皮膚に関する情報を、ある程度修正して行こうと思いました。
その代表的な部分は27ページの図にあります。
実際に人の皮膚を顕微鏡で見たことのある人なら解ることなのですが、角質層に色のついたメラニン色素、正確にはメラニン色素顆粒はありません。
ただし、マッソン・フォンタナ法という染色方法で元メラニン色素であった物質を黒く発色させると角質層も黒い顆粒が出現します。でもこれは色がなくなっている物質を染色したのであって、実際には無色なのです。そもそもメラニン色素は染色しなくても見える物質なのです。
実際に皮膚を顕微鏡で見たことのない人は、染色した写真を見て角質層に色のついたメラニン色素があると思われているのです。
しかも、現在世間にある皮膚の図のほとんどが基底層にあるメラニン色素が、角質代謝とともに角質層に上がっていき、垢となってはがれ落ちるように描かれています。
その大きな誤解が、角質層のメラニン色素を除去して早く白い肌にする美白の考え方になっているのです。だからこの本では、ただしいメラニン色素の分布にして描きました。

メラニン色素が分布している主なところは、表皮の基底細胞の中ですが、特に基底細胞の核の上部に日傘のように集中して分布しています。
この状態はメラニンキャップとも呼ばれています。これは表皮細胞を生み続ける基底細胞の核の中にある遺伝子を守る働きがあるのです。
そして同時に真皮も守っているのです。図のタイトルが「メラニンをつくって真皮を守る」とありますが、正確に言えば、表皮をつくる母細胞である基底細胞も守っているので表皮も守っていることになるのです。
それからメラニン色素は基底細胞の中にあるので、細胞の外には出ていません。
そこも間違ったメラニン排出説の生まれるもとになっていますので、正確に細胞内にあるように図の校正を入れて直してもらったのです。
おそらく、市場に多く出ている美容本の皮膚の図で、このくらいメラニン色素の分布にこだわりを持っているのは非常に少なく、今回の共著本がメラニン誤解を取り除く何らかのきっかけになれば良いと願っています。
特に皮膚科医の先生方には改めて、この誤解を積極的に訂正するように働きかけて欲しいものです。