ロレッタブログ

健全な肉体に狂気は宿る - 2010.12.23

この日に記した精神科医・春日武彦さんの‘顔面考‘も読了したので、次は内田樹さんとの対談本を手に取ってみました。
またまた自分の覚え書き用に記します。
(後日談:内田さんは大瀧詠一の大ファンらしく、自分と近しい友人たちが集う場でなにかと交流があるようで驚き。世のなか狭すぎる・・・。)

健全な肉体に狂気は宿る / 内田樹・春日武彦 / 角川書店
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春日 人間ってけっこう「現状維持」が多いんですね。口ではあれこれ言ったって、やっぱりやらない。ほんとうにみんな、変化が嫌いですから。
わたしの診療室に来る患者を見ていても、なかなか腰をあげませんからね。
だから、人生関係の本だって、相田みつをさんみたいな、「ありのままでいいんだよ」っていうのが一番売れるんじゃないですか・「変化に憧れつつ、変化しない」というのが、みんな好きなんだよね。
内田 変化が嫌いですね。でもこれからは、変化しないと生き延びられないんじゃないかという気がするんですよ。

内田 合気道ではごつい筋肉がついている人はほとんどいないですね。それより軟らかさですね。それに、相撲の世界で故障が多いのは当たり前なんですよ。体重が増えるということは容積が増えるということでしょう。
でも、体重が倍になっても、それを支える筋肉や骨の直径は倍にはならない。解剖学的に不可能なんだから。人間が人間でいられる身長体重の範囲は決まっているわけです。それを超えたら壊れますよ。
ひとりひとりの人間にはその人にとっての「最適サイズ」というものがあって、それよりも大きくしても小さくしても、身体には障害が出てきます。
ぼくたちが探さなければいけないのは、今の自分にとっての最適サイズなんです。生存に一番有利で、身体的ポテンシャルが発揮できて、かつどこにも過負荷のかからないぴったりの体型というものがひとりに一体ずつかならずあるはずなんです。それより太っていても痩せていても、どちらにしてもパフォーマンスは下がる。
でも、今ダイエットする人でそんなことを考えている人はいないでしょう?はじめに数値目標があって、それに向けて痩せて行くんだから。
そうじゃなくて、自分がどんな体型だと一番快適で、一番性能がいいのか、それを探るべきなのに。
春日 その最適体重と、ちまたで一番美しいとされている体重とが折り合わないのが、今のつらい状況ですよね。(笑)「あなたは六十キロが最適体重です」と言われても、五十二キロサイズの服を着たいわけですから、つらいですよね。
内田 でも、そのツケはいずれ回ってきますよ。
例えばプロの格闘技家の中にはステロイドを使えば心臓に負担がかかって、いずれ命を縮めることはよくわかっているんだけれど、「それでも今お金が欲しいから」と言って無理する人もいるでしょう。それはもうしかたがないですよね。ご本人の決断なんだから。
たとえ短くてもリッチに生きたいという人は、脳的快楽を身体的快楽より優先させているわけだから。