ロレッタブログ

和楽 特集号 - 2011.01.23

「玉三郎さんはやっぱり女形として、だんとつに美しい」と歌舞伎がお好きなお客様から教えていただいて、手に取った一冊。
昨日の読書一覧にも載せましたが、とても共感する部分があったので、覚え書き。

やはり今思うのは、どんな事でも身につけておいて損はないということですね。いっぺん身につけた事を捨てるのは簡単なんです。ただ、そういう時でもちゃんとした人から、しっかりとした基本を教わることが重要です。「変な癖をつけない」ことが大切ですから。癖ってだれにでもあるものなんですよ。体が持っているものですから。でも、それは個性とは違うんです。
こういうたとえが正しいかどうかは分からないけど、野球の投手でも、この人の投げ方は身体のこの部分を壊してしまうな、というのがあるでしょう。そういうのが「癖」。いろんな人がやってきて、いちばん身体に故障が起きずに、こういう風にやっていけばどういう風にでも応用がきく、というのが「基本」。一番素直な表現方法なんです。
躍りでも楽器でも同じですけど、それを身につけてから先に進もうとすると、どうしても時間がかかる。だから、癖のほうに走りがちになるけれど、そうすると遅かれ早かれ行き詰まる時が来る。長期的に見れば、どちらが得かは明らかなことなんです。
そういう風に基本を身につけて、なおかつ身体からあふれ出てくるのが個性。だから個性は外から見ている人たちが発見するものであって、自分ではある意味、分からない。演者としては真っ直ぐに稽古して、表現して、ひたすら素直にものを作っていくということを一生涯やるだけです。
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お化粧は色々と試行錯誤していくものですが、いじりすぎるときりがありません。どこでよしとするかが肝心なのです。また化粧を学んでいくなかで強く胆に銘じなければならないのは、自己満足に陥らないということです。必ず人に見てもらうように、それもなるべく遠くから見ての感想を遠慮なく言ってもらわなければなりません。
目の前にある鏡にはよく描けたように映っても、実際にご覧になるお客様は何メートル、何十メートルも離れたところにいらっしゃるわけです。そのときにちょうどよいつくりにするためには、他人の目で見てもらうことがいちばん大切です。近くで見たときのお化粧の出来よりも、全体の輪郭が大切なのです。
描きすぎて表情が見えないような、くどい顔になってしまうのがいちばんよくありません。女形の化粧は必要最小限でやることが基本で、過剰な化粧は演技過剰と同じことでしょう。
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