ロレッタブログ

ダイエット&ビューティーフェア2014(エステティシャンや開業を目指す方へ) - 2014.09.16

先週は、ダイエット&ビューティーフェアに行ってきました。

こんなパネルディスカッションがあったので、聞いてきました。「たかの友梨の労組問題に少しは言及するかしら?」と思いながら。

「健康増進産業としてのエステティックの可能性」というお題に思わず本気で笑ってしまった理由は、健康増進を語る以前に、現場は時間、体力、精神の3つ全てが非常に過酷な労働環境なのでスタッフの健康が加速度的に減退する業界だからです。(苦笑)


■健康増進分野でのエステティックの可能性-ボランティアを超えた産業を目指して
共催:一般社団法人日本エステティック協会

・「フランスにおけるソシオエステティックの現状および課題」
 CODES理事長 オリビエ・ルフロック
 CODES校長 マリーオード・トレスマグダノ

・パネルディスカッション
「健康増進産業としてのエステティックの可能性と課題」
(株)ミス・パリ 代表取締役 下村 朱美
(株)ソシエ・ワールド 代表取締役 須藤 政子
特定医療法人大坪会 三軒茶屋病院 病院長 大坪 由里子
ファシリテーター:日本エステティック協会理事長 久米 健市


私の古巣ゲラン(ソシエ)の須藤さんは、私が働いていた当時は専務でした。たかの友梨の労働実態が問題になっていますが、まあどこも同じようなものですよね。似たり寄ったりというか・・・。(苦笑)ステージからは「経営者も襟を正す必要がある」「安心安全な産業になること」なども聞かれましたが。エステティシャンへのメッセージは「とにかく辞めないでほしい」「続けてほしい」とも。(笑笑)

長時間労働や薄給は、何一つろくにできない、給料分の売上すら上げられない下積み時代ならお給料を頂きながら勉強させてもらっているような時期ですからまだわかるとしても、数字も実績も上げて顧客支持もある人材を評価する給与体系が無く、そしてそのシステムができる見込みも無い会社の体たらくなら、見切りをつけたエステティシャンから辞めていくのは当然です

セールス成績さえ良ければ入社半年や2年目で店長になったりもする業界ですが、現場で技術者として生きていきたい場合は給料はほぼ変わらない。私が辞める時も店長とは相当モメました。

具体的には、書面で残らないように、いちいち呼び出して「退職前に有休を消化しないで、ぎりぎりまで勤務しろ」とか言ってくるわけです。もちろん、私も自分が退職するとお店が傾く可能性が高いことは十分認識していたので、退職を妨害されないように色々先手を打ちました。

下の参考資料は日本エステティック協会発行の会報誌(らしい)。会場で配っていたのでもらってきました。エステは国家資格がない代わりに、こうしたエステ関連団体が幾つもあります。名前が似たり寄ったりでとてもややこしい。表紙に「スタッフ教育を問い直す」とあり、様々な意味で私の関心をひきました。(笑)

手に職への憧れと美容のきらびやかなイメージで、肉体労働と感情労働を甘く見て職人の世界に入る人は美容業に特に多いと思いますが、下の図が現実です。

大げさではなく、100人雇っても99名が辞めるような業界です。大手だと大抵は2年以内に身体壊して辞めます。そして、5年以内にほぼ全員が辞めます。~20年という勤務歴の方は、たぶん大手の労働環境よりはましな環境の小規模店、またはパートタイム勤務やフェイシャル中心のサロンでしょう。他には、受付やカウンセラー、店長クラスですかね。つまり元エステティシャンで、今は施術はほぼ担っていない人。ちなみにこれは

ちなみにこの図はエステティック協会の冊子に掲載されていたものなので、アロマセラピー系サロンはおそらく含まれていないと思いますが、アロマでもどこでも美容健康業界はあまり大差ない状態と予想します。


私はゲランに5年か6年勤務したと思うのですが、全国の同期は2年目には全員辞めていました。辞めた人とは偶然再会した1人しか連絡を取っていません。彼女はソシエの脱毛の技術者で勤務3年目に退職し、美容学校校長を務めたのち、某メーカーのサロン立ち上げに尽力し、出産を機に退職。脱毛技術者は技術差が生じにくく(針脱毛の達人級なら別ですが)、施術者での今後の現場復帰は体力的にも色々と難しいでしょう。

したがって、同期で数年間フルタイム勤務し、独立開業してさらに年単位で第一線で生き残っているのは私だけだと思います。副業として1人だけ独立した先輩を知っていますが、育児の合間に細々お小遣い稼ぎ程度に、という感じで、自分の稼ぎだけで自分を食べさせていくことができるという意味での「生業」とは言えない感じでした。

結婚退職や他業種転職した人もいますが、エステ業界で数年働いた人の転職先は、メーカーのインストラクター、営業部、企画部などが多く、メーカー担当者と話すと「元ソシエ」と判明するケースが多々あり、毎回笑ってしまいます。お互いに、ご挨拶する前から、たたずまいや物腰で「同じ匂い」がそれとなく判るんですよね。実際エンビロンやDrルノーにも、ソシエ出身のインストラクターや営業担当がいますからね。アンネマリボーリンドや、銀座三越香水売り場にもいたなあ。みなさん私が5年勤務したというと「そんなに長く・・・!!」と驚愕されます。

ただし、ロレッタで私に「(技術や知識を)教えてほしい」と依頼して断られた人も多いですよね。正直、この世界で食べていくだけの覚悟がなさそうな人はお断りしています。副業や小遣い稼ぎではなく「生業」として真剣に習得する心づもりのない人と向き合うのは、お互いに時間の無駄だからです。そして中途半端な技術者が増えることで、最も迷惑こうむるのはお客様です。お客様の大事な時間とお金を、適当なところに落とす羽目になるのは、あまりにももったいない。

エステ業界は開業後1年以内に約6割が閉店し、3年目を迎えられるのは僅か1割未満。レッドオーシャンです。独立したら、ボーナスも有給も昇級も厚生年金も労災も退職金も無し。研修費も出張費も全て自腹です。そこまで理解してこの業界にあえて独立という手段で飛び込む人はほぼいないようですが。つまり多くの開業者は、見込みが甘く世間知らずで呑気なんです。

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お客様の立場でサロンを利用するだけであれば、いいところだけ目にして「やりがいがあってうらやましい」と思うかもしれません。しかし現実には、中途半端な手に職ほど、世の中で食べていけないものはありません。

「自分がきれいになりたいから美容を仕事をしたい」という人は、美容を趣味のレベルに留めた方がよいかもしれません。仕事では「自分のことは一番最後」です。何よりも最優先するべきはお客様であり、お客様のご予約に自分のシフトを合わせる仕事です。技術も知識も接客も時間も、すべてはお客様のためにあるのですから。ここを勘違いしたまま業界に入り「自分がきれいになることには関心があるけれど、人をきれいにすることには興味がなかった」と後で気づくのがオチですす。

憧れだけで安易に足を踏み入れる前に、まず現状をよく知ることを強くお勧めします。