ロレッタブログ

日時計の影 - 2015.07.16

安倍総理の躁状態をみるたびに思い出すのは精神科医中井久夫先生の「日時計の影」。
このブログでは、中井久夫先生の著書は「災害がほんとうに襲った時―阪神淡路大震災50日間の記録」でご紹介しましたね。

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安倍政権発足に思う

若くて貴公子然としていて未知数で名門の出で、父親が有名な政治家でありながら志を得ないで早世している点では近衛文麿を思わせるかな。しかし、近衛のように、性格は弱いのにタカ派を気取り、大言壮語して日本を深みに引きずり込むようなことはないと信じたい。

今の日本はいやに傲慢になったね。対外的にも対内的にもだ。
たとえば格差是認か。大企業の前会長や首相までが、それを言っているのはかわいくない。˝ごくろうさま˝ぐらい言え。派遣社員もだけど、正社員も過密労働と低収入で大変だ。

今、貧しくなった国民が対外強硬策に喝采しているのを見ると悲しくなる。外に目を向けさせる政策ではないか。

今もアジアの人は政府よりも皇室のほうに好意的だ。皇室は謙虚だと思われている。そもそも、今、王政の国はだいたい無害な穏やかな国だ。二十世紀になってできた新米は除いての話だが。王室というものは発展よりも存続を優先させる。発展好きの現代に対するバランスだ。

卑屈と謙虚は違う。今の日本人は卑屈か尊大かだ。謙虚を徳目とした日本人はどこにいったのか。今、中国や韓国に向かって尊大なのは某国に対して卑屈な反動ではないだろうね。どこに対しても˝毅然とした政府˝で臨んでいるのだろうね。
(2006年9月)
日時計の影 / 中井久夫 / みすず書房