ロレッタブログ

映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 - 2018.12.12

日に10万アクセスを誇るブログ「ゲイです。ほぼ夫婦です」の歌川たいじさん。2丁目の伏見ママのお店でお会いして、その時にいただいたブラウニーがとっっっってもおいしかったのでした。その半生は著書でも知っていたのですが、そのプロ並みの料理を身につけた背景には、母からの徹底的な虐待がありました。

その歌川さんが原作の映画「母さんがどんなに僕を嫌いでも」が大ヒット上映中。非虐待・虐待の当事者まっただなかの人は目をそむけたくなるだろうし、とても見にいけないかもしれないけれど。親の気持ちと子供の気持ちと、それぞれの立場で観られる映画なのでぜひ。ただの毒親恨み節映画では終わりませんから。

女性は特に、自立以前の段階から様々なスタンダードと価値観と世間体に揺さぶられがちなので、自分の軸が定まらないまま(≒定めようとしないまま)なんとなく流されるように生きてきてしまい、気がついたら似たような状況に陥っている・・・という女性は今でも少なくないんじゃないかと感じます。
ちょっと可愛かったり綺麗に生まれついてしまい(容姿の自己評価は中の上よりも上だと推測する)、年齢も情報の取捨選択が不得手な10代20代とまだ若いうちだと、もっと流されやすいかもしれない。

うさぎさんとの対談は、私は仕事で行けなかったのだけど、後日こうして聞けるようにしてくれるママには心から感謝です。
映画本編の鑑賞の前にこれを聞いたかたは、ぜひ鑑賞後にも聞き返してみてください。
●アデイ・ラジオ第13回 中村うさぎ(小説家・エッセイスト)× 歌川たいじ(作家)

今年2月のこうき副店長(絵本発売決定おめでとう!)との対談はこちら。
こうき副店長も半生を描いた絵本が無事発売決定。
●アデイ・ラジオ第9回 歌川たいじさんをお迎えして、”親に愛されない、ということ”

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この数年は毒親がブームみたいになっていましたよね。サロンでも親に悩む方のお話を頻繁に聞きます。身の上相談は生業ではないけれど、そのぐらいとてもよく聞く話。解消しきれていない問題を抱えてる人は少なくないです。

困難のない家庭なんて、探すほうが難しい。殺人の50%以上は親族間で起こるそうですが、程度と加減の問題は距離が近しいほど難しいのです。勉強よりも、仕事よりも、人間関係が最も難しい。

とはいえ、変な親の元に生まれたからといって、自分の幸せの可能性まで捨てる必要はないわけですよ。
幼少期や思春期など過去の辛い出来事のせいで、今もこれから先も自分は損なわれ続けるのだという観念ほど絶望的なものはない。これほど無力で、希望が無く、生きている楽しみの無い、しんどい生き方ってないですよね。

人間関係で大きくつまづいて自尊心がとことん損なわれると、自分の身を守れるのは自分しかいないという事実に気づかされるもの。そうなると「もう誰とも深く関わるものか」となりがちです。それもよくわかる。
それでもじきに人は「誰かとつながりたい」「自分をわかってくれる人が欲しい」「誰かと理解しあいたい」と願うようになるもの。「構わないでくれ」と思いながらも「実は構ってほしい」もあるのが人間なんですよね。わがままでめんどくさい生き物ですよね。(苦笑)しかしそもそも、関わりの拒否って、他者に構われる前提があるからこそ成り立つもの。社会的動物であるヒトは「友達いらない」的にふるまい「今更誰かとの共同生活なんて無理ー」と言いながらも、現実には何かしらの方法で他者と関わらずには、構われなくては、構い合わなくては生きていけないのだと思う。
自ら選んだ孤独はよくても、孤立は辛いという人の方が多いのではないでしょうか。

親も未熟だったし、周りの人間にも悪いところもあったでしょう。幾度もの挫折もあるでしょう。その葛藤は永遠に続くように感じられる時もあるでしょう。しかし、いつまでたってもそれにしがみついて、今の自分が不幸であること、そしてこれからも不幸に決まっていると、うまくいかないことの言い訳にしているのはあまりにももったいないです。
そして最も怖いのは、そういう自分も大嫌いになること。
自尊心も自己価値感も持てないまま育ったのであれば、自分で育めばよいのです。
自分の可能性を広げていくこと。そのために善い人との出会いを大事にすること。自分の未来に親は関係ないです。

歌川さんも語るとおり、虐待されて低くなった自己肯定感を取り戻すには、何十年もかかります。
急ぐ必要もないけれど、取り戻さないままでいつか後悔しないように。
色々あった過去も自己受容と変容の武器に変えて、自分を活かす人間関係とともに未来に進みたいですね。

●「人生の収支は黒字にできる」母に傷つけられた僕が伝えたかったこと

●<これも学習マンガだ!選出作品著者インタビュー>『母さんがどんなに僕を嫌いでも』歌川たいじ先生

「僕は、「親を憎んでもいい」っていうアナウンスの、次の情報を出したかった。
痛みがあるうちは思いきり親を恨んでもいいけど、それを通り過ぎた時、自分をどう立て直していくの?っていう問いかけをしたかったんです。傷とか恨みにしがみついていても、幸せになれるわけではないよって言いたかったんですね。できる人から、さっさとそんなの手放して前を向いたほうが楽しいよ、ラクだよってことを。
まあ、そこにたどり着くまでに越えなきゃいけないハードルはあるかもしれないけど・・・だからこそ、自分を建て直すことに方向を定めて、早いうちから始めたほうがいいよっていうのが、伝えたいことでしたね。」