ロレッタブログ

男の好むナチュラルは結構お金がかかるものである - 2019.01.11

激しく同感!ほんとのすっぴんなんて目も当てられない。

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鈴木涼美「アラサー女がそんなことで喜ぶと思うなよ」
めでたく30歳を過ぎた鈴木涼美がおくる「アラサー女性論」。30代になった女が失うものは? 得るものは? なにかが変わるのか? 時代を鋭く読み取る元セクシー女優にして社会学者の気鋭のコラム。
→●すっぴんがいいね、とキミが言ったから〜アラサー女の真のスッピン

『そう、男はこぞって濃い化粧より薄い化粧、セクシーワンピよりさりげない色気、整形顔より普通の童顔、作られた礼節より天然ぽい笑顔、が好きと言いがちなのだけど、女のスッピンを本気で好きな男などほとんど存在しない。
すっぴんとかナチュラルが好きと言う時の男の脳内に浮かんでいるのは湖っぽいところから濡れ髪で上がってくる本仮屋ユイカみたいな状態なのだろうが、本物のスッピンというのはそんな透明感があるわけもなく、突き詰めればほとんど商店街のおばさん。韓国のサウナで半裸でアカスリをしてくれるあのパンチパーマの集団こそまさに本物のナチュラルなわけである。それを色っぽいと思うのならばそれはそれで自由だが、少なくとも多くは最早オンナとすら認識しないような女、それこそがリアルにナチュラルな女である。』

『会社の厚化粧のOLの数倍スレているのが吉原の女で、会社のOLたちから醸し出る計算やあざとさを持たないのは、本当のところ吉原の女ではなく、地元のスーパーで働く元同級生の方である。
しかし、彼は男にあざとく迫ることで数百万円を稼ぎ、その稼いだ数百万円を整形につぎ込んでより化粧を薄くした女たちを、「さりげない品と、作られた美ではない自然な可愛さを持つ」女の子として激しく愛していた。

男の好むナチュラルはそんな感じで結構なお金がかかる。
例えば20歳前後になってようやく百貨店の一階で思う存分化粧品が買えるようになり、ゲランやクレ・ド・ポーやシャネルを顔に貼り付けていた頃の私と、百貨店の一階に出かけるのも面倒になり素顔をやや進化させることでなるべく日々の化粧をしないで過ごせるようにしている今の私と、どちらにお金と手間がかかるかといえば当然後者。
生まれた状態からどちらがかけ離れているかといえばやはり後者なわけで、しかも35年間お金と手間をかけ続けてこのレベルなので、水から上がった本仮屋ユイカ状態までは未だ全然遠いし、その極みまで行き着くには少なくともあと500万円くらいはかかりそうなものである。』

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ちょっと話がそれますが、「寝起きやすっぴんでも整った目元」を目指してアイラインと眉にアートメイクを施したのに、表情が活き活きしているかどうかというと、なんだかいつでもどこでも同じ顔の金太郎飴みたいな感じで「むしろアートメイクをやらない方がよかったかも?」と思えるケースのほうが多いです。ラインが太すぎたり濃すぎたりして、ギョロ目や常時目を見開いたみたいになっていて(本人の自覚の有無は別として)傍目には「顔つきが怖い女」になってしまっているケースも頻発。

じゃあアートメイクを消せば済むのかというと、要は刺青と同じなので、一度いれてしまうと薄くなることはあれども自然に完全に無くなることはないみたいなので、妙な仕上がりもあとの祭りでしかないという・・・流行りすたりがある目元に消えないメイクはそもそもリスキー。レーザーでの除去もノーリスクではない。美容整形も美容医療も化粧品も、安易に手あたり次第に飛びつく人ほど高いツケを払っているように感じます。自分の顔や身体に失敗が跳ね返ってくるのだから多角的かつ冷静に検討したい。

さらに、いくらアートメイクや整形で造形を整えても、皮膚は外界と最前線で接しているので日々老化します。そこが頭の中できちんと整理できていない方がとても多いです。最前線の皮膚をどう使うか、そのケアは全身の免疫系にとっても非常に大切で、だからこそ自宅でのスキンケアとエステの併用が強固な2本柱になってくれるものなのですが、それぞれに何ができて何ができないのかを整理しきれていない人も多いかな。

さんざんエステと化粧品業界で働き成分にも精通した私としては20代にゲランやクレドポーは、その内容成分と目的や使用感も含めて、必要無いと考えます。お金を稼ぎはじめて高級品にあこがれる気持ちは誰しもがある程度あるものだし、それが現代の消費社会を支えているのは紛れもない事実なのだけれど、なんでも高ければよいわけではない。

そしてもちろん、化粧品で造形は変わらないわけですよ。(変わるわけがない。)そして、造形を変えるほうがよほどお金もかかるし、メンテも必要になるし、医療機関での感染症や薬剤のリスクもあるし、エンドレスでそれなりの金額が維持費として必要になる。つまりそれだけのリスクを負うわけですよ。

なので、整形に関してはうちの整形に関心のあるお客様には事前に「欲が出てくるからきりがなくなることを覚悟しておいた方がいいですよ。人間は欲の生き物だから。自分も例外なく際限なく欲が出てくるはずだと自覚して、やるならそうなることをよくよく覚悟しておいたほうがよいですよ。」と私は明言しています。ひとたび整形して成功したら、やはりどなたも「ここも」「あそこも」「次は身体も」「だったらいつやろうか」となり、きりが無くなっていっている人が9割9分以上です。

さらに私の出会った女性の中には、「スキンケアやエステ代をケチって造形の維持に必死だったので、パッと見の顔立ちは若いが、髪と皮膚と身体は著しく老人化しており、声もしゃがれてヨボヨボ感が漂っており活舌も悪い」というケースも。本人がそれで幸せで満足していればよいのだけど、果たして美のトータルバランスとしてはどうなのか、疑問です。

このように、メディアや自称「美のカリスマ」的な人達や素人コスメフリークが好き勝手に様々な説を喧伝しているせいもあり、「美容のことはとりあえず評判のよさそうな高級品を揃えて、手あたり次第やれば最高の結果が出るはず」と思い違いをしてしまっている女性がまだまだ多いです。

若いうちに整形をすることで「若くかわいい」「若く美しい」が実現できても、30代半ばを過ぎるればさすがに毎年ひたひたと忍び寄る老化をどのように扱いつづけるかが大きな課題になるわけで。しかもそれは、女を捨てるか死なない限り、好むと好まざるに関わらず大きなテーマになります。

その点うちの相方は、美しくあるために努力しようともしない女がそもそも嫌いで、本人も男性としてよくあろうと努める人なので、女の身支度に時間がかかるのは当たり前と理解していてありがたい。生身の女の努力と工夫と熱意と苦心とを知らない男性が勝手に夢みる女性像なんて、幻どころかファンタジーすぎてもはや笑える。

だからこのエッセイがこう締める気持ちも、よくわかる。

『深夜や早朝に、今からおいでよ、なんて連絡をよこしてきて、「なんで来られないのー? 仕事あるのー? 明日早いのー? いいじゃんすっぴんでー」なんてほざくのは、イノセントにもほどがある。
言っておくけど、朝起きてから男の好みの「すっぴん」状態に持って行くには大体2時間くらいは必要なので、深夜に急に呼び出されたら、アカスリおばさんのクオリティで行くしかないのでございます。』