ロレッタブログ

インプットに割く時間のほうが大切 - 2019.12.01

接客業や営業職など対人のお仕事に就いているお客様から、たまにいただくご相談があります。「対人業あるある!」の内容で、これと似た相談も非常に多いので、ブログ掲載の許可をいただきました。少し長くなりますが、今日と明日の2回に分けて私の考えを記しますね。

ご相談はこちら↓↓

「仕事でお会いする人から、プライベートまで関わりをもちたがられて困っています。「お茶しに行きましょう」「ご飯食べにいこう」とかなら、まだまあありがちかなと思いますが、その人のおすすめのお店に「あなたも行けばいいのに」みたいに私が合わせるのが当然みたいなことを言われます。私は休日には他にやりたいことがあるし、仕事関係の人と私が休日に会っても、その人が日給や休日出勤手当を支払ってもらえるわけじゃないです。休日に私は無給労働で心身まで無休になるのが、想像できないみたいです。トラブルメーカーっぽい人なので、角を立てずに断るにはどうしたらいいでしょうか。」

こういう事例は私も沢山見聞きしてきました!たとえば同業者ではこんなケースがありました。

  • お客様に「まつ毛エクステ受けに行くのについてきて」「センスがよさそうだから私のお買い物に付き合って」など、プライベートの用事にも同行を要求される。自分の友達を誘えばいいのに。どうしてサロンのスタッフを誘うのか謎。
  • 「食事に行きましょう」と再三誘われるので、1回限りのつもりでご一緒したら、その後も「またご飯いきましょう」とたびたび誘われて困っている。
  • どうしても一緒に食事をしたいとなんども言われるのでしかたなく行ったが、それなりに値段の張る高級店だった。割り勘だったので経済的な負担も増す。非番の日に気を遣う用事が増えただけで困る。

大抵のお客様は、心根の温かい常識的なかたです。「相手には相手の都合があるし、タイミングもある」という対人関係の大前提を理解している人は、自分の自由を尊重するのと同じように、相手の自由も尊重します。そういう人は誘いを断られてもいちいち気分を害することはありません。私もお客様とごくたまにお食事をご一緒することはありますが、それも特別に用件のある時だけで、ちゃんと仕事のできる人はお互い忙しいのを理解して尊重しているので、何のプラスアルファもない「とりあえず飲みに行こうよー」みたいな誘いや休日に呼びつけるような非常識なことはしてこないですよ。

仕事は仕事として、プライベートではプライベートの友人として、メリハリをつけた交流ができる成熟した人は貴重です。 しかしご相談者の方や、上記のケースのような事例では、お断りすると相手が気分を害しそうなタイプと察して困っている様子でした。

社交スキルとしての「ひとまず相手の話を肯定的に聞く」というのはマナーみたいなもので、対人職や接客業に携わる方ならなおさらそのような対応をしているでしょう。しかし、他人との境界線が曖昧だったり、線引きが近すぎる人は「境界線」という概念がそもそも理解しづらいようです。

私の想像ですが、「接客」と、家族や親友的な「仲が良い」や「親密さ」の解釈が混在していて、接客業の肯定的なあいづちや傾聴を「私と考えも行動も共有する感情も何もかもが一緒!」「私を理解してくれる!」みたいな範囲まで拡張して捉えてしまうのかもしれません。自分より年上の人でもメンタルが思春期あたりで止まっている人って、実際にいますからね。友だちがいなかったり、孤独耐性が弱い人ほど、そうなりがちかも。

しかし、相手の都合と自由を許さず、本来の関係を超えた対応まで相手に期待するのは、甘えと依存心と支配欲の強さのあらわれです。これは別にお客さんとお店の関係性に限定したことではなくて、取引先、上司、部下、同僚、ご近所、ママ友、同級生、幼馴染、友だち、親子、夫婦、親類など誰に対しても言えることですが、 困っているときの頼り頼られや助け合いはあっても、常日頃から何から何まで相手にあわせる必要はないわけですよ。奴隷契約じゃないんだから。

みんな休日にやりたいことは色々あるし、充実した日々を送っている人ほどそうだと思います。「今週は忙しすぎて疲れたから、週末は何もせずにぼーっと休む」だって、休息という「やること」です。人に合わせすぎていたらこちらが心身を壊します。

だからこの場合は、感謝してお気持だけいただいたら、あとは嘘ではなく本当に自分のためになることに邁進するといいんじゃないでしょうか。それが一番自分のためになりますし、自分の取引先や担当者のスキルアップやブラッシュアップに励む向上心を応援することはあっても、その邪魔をするようなクライアントはいないはずですから。仕事でより優れたパフォーマンスが発揮できなくなったり、オフの時間を有意義に生きられなくなることのほうが本末転倒です。

さらに付け加えると、何かに本気で取り組んだ経験がある人なら、異業種や異分野のプロにもちゃんと敬意を払います。結局、仕事も人間関係も自立心も自律心も中途半端な人ほど他分野を見下したり雑に扱うように感じます。1つのことをとことん極めるために、人目に映らなくても、どれだけ一人でコツコツ汗水流す努力したかなんて、真剣に何かに長期間取り組んできたプロならとっくにわかってますよ。これが分からない時点で、こう言っちゃあ何ですが中途半端な仕上がりの人間だと思います。


 

どういうことか、もう少し詳しく説明しますね。

お金を支払う「お客さん」の立場のかたは、お店やスタッフはまずは「ウェルカム」という態度で迎えるのが大前提です。(お店側が「問題あり」と判断すれば入店禁止や受付拒否などの対応になりますが、あくまでも一般的な入店時のケースとして話をすすめますね。)そういう風に予防線を張って自分の優位性を保たないと他人と会えないタイプの人はいます。いわゆる人見知りのような「若干の自意識過剰傾向」とは違っていて、「自尊心に問題を抱えている人に見られる対人恐怖症」みたいな感じです。

たとえば、お金を払う「立場」や社会的な「権威」などの自身に優位性が何もないフラットな状態で他人と出会うと、何が起こるでしょうか?

  • 自分が相手に興味を持っていても、相手は自分に関心を示さないかもしれない
  • 一生懸命話しかけても、つまらなさそうな反応をされるかもしれない
  • こちらがまた会いたくても、誘ったら断られるかもしれない

でも、こんなことって当たり前なんですよ。 人間関係は自分の期待通りや思い通りにはいかない。でも、世の中の全ての人に好かれる人もいなければ、世の中の全ての人に嫌われる人もいない。 それでもうまくいかないときはいかないし、うまくいっていたように思えたものもうまくいかなくなることもある。気が合っていても合わなくなることもある。縁が遠くなったと思っても、数年後にまた繋がることもある。その理由は確固たるものがあるようで、実は適当だったり、なんとなくだったり、本人もあまり考えておらずよくわかっていなかったり。 理不尽と言えば理不尽かもしれないけ れど、程度の差こそあれ、自分だって似たようなことをどこかでしていたりする。 それが現実です。

お互いどちらかが死ぬまで永遠に続くわかりあえる仲よし、みたいなものはありません。ファンタジーと現実は違う。

この現実を受け入れて、それでも他者とより良く関わっていきたいのであれば、自分の長所を伸ばし、思いやりのある苦言に耳を傾け、外見も中身も充実したより魅力のある人間になる努力をすればよい。中身と外見のバランスが悪かったり、理想と現実が乖離しているなら、バランスが釣り合うようにする。でもこういうことは自分で努力して実践していくことなんですよ。 「ありのままの自分」は「自助努力しなくてよい」という意味ではない。 自分の進歩や飛躍や充実なんて、そもそも他人に任せるものじゃないし、そんなものは誰も請け負えません。

しかし対人恐怖傾向が強いかたは、誘いの断りを「人格を否定された!嫌われた!」ぐらいに飛躍して受取ってしまう。だから安全牌として お金を払う立場という優位性の確保を保険にして「お客さん」として友達候補をふるいにかけたい。 しかしここで求められている友だちは「架空のおかあさん」です。つまり仕事以外の時間でも快くコミットしてくれて、無条件に受容し、いつでも慰めてはげましてどんな要求にも応える別名「便利屋」

男性ならこういう場合はスナックで子供返りして「ママ」に甘えるとかでしょうかね。あとは休日の自分の余暇(ゴルフとか?)に部下を連れまわして、まるで兄弟が増えたかのように錯覚するとか。 「立場」が無いところでどうふるまったらよいのか、わからないのかもしれませんが。 私にいわせれば、「その人が大事にすべきは本当の家族のほうだし、部下だって彼女がいたり家族がいたりするんだから休みの日ぐらい自由に解放してやれよ」、と思います。

話戻って。したがって「客」と「友だち」の立場の境目は非常にあいまいで、その境目は本人のその場その時の気分や感情で一方的に決められる。ここまで読むとお分かりのとおり、もう大人と呼ぶのに十分な年齢でも、こういう対人恐怖傾向でメンタルが健やかな状態ではない人はいます。しかしそれはご本人がご自身で解決していくべき課題です。

ですから、ぜひ休日や休憩の時間は、長期的なスパンでご自身のキャリアにつながる新たな学びや体験や研鑽、身体のメンテナンスに時間と費用を最優先に充てるようにしましょう。 特にエステティシャンやセラピスト、専門職、営業職などのかたは、就業時間以外の時間により広く深い学習を必要とする仕事だと思いますから。学びに終わりはありません。

明日は、私が最近メンタルヘルスに詳しいお客様に教えていただいたある事件について記しますね。

20年ぐらい前のことらしいのですが、当時の事を覚えているお客様も多かったです。特にお子さんがいらっしゃる世代のかたは、強烈に覚えているようでした。誰とでもソツなく社交的に振る舞える人に対して、一方的に親密な関係を求めて、逆恨みして起こしたような事件です。世の中いろんな人がいますし、対人業に就いている方ほど他人事ではない部分がいくらかありそうに思ますから・・・。

続きは明日。