ロレッタブログ

スキンハンガー <続き> - 2020.05.23

昨日の続き。

日本は接触コミュニケーションが少ない国で、夫婦間はいわずもがな、カップル間でもセックスレスが珍しくなく、その内実は男性は風俗でタッチングのニーズ(自己承認欲も)も手軽に満たせる場はあるけれど、男性をデリバリーする女性はまだまだ少ない。

あくまでも自然な出会いを求めるのは恋愛小説や漫画などのファンタジーの影響なのかプライドなのか、はたまたその両方なのか人によるとだろうけと、38歳バツイチ独身女がティンダーをやってみた結果日記 が話題になったのは一連の展開が女性ではまだレアケースで、なのにそこに描かれている心情は女性が共感する内容だからでしょう。

https://cakes.mu/series/4423

女性はセロトニン分泌がもともと少ないなど様々な要素が絡み合っているのだとは思うが、日本では女性のほうが人肌に触れる&触れられる機会が無いからスキンハンガーも顕著になりやすいんじゃないかと思う。

日本の家族像は「サザエさん」や「ドラえもん」で、社会の最小単位が個人でも男女でもなく家族で(戸籍制度)、お母さんはお母さんで、女を優先するタイプだとちょっとね・・・的な空気はまだ残っているし、世間様が神様の日本社会ではなかなかそれに抗える女性は増えてきているけれどまだ多数派ではなく、お父さんはいてもいなくてもどっちでもいいけど死なれたら困る程度の存在になりがちで、もちろん男ではない。

したがって男女が家族化すると性はまるで近親相関のようになりやすく、夫婦で会社経営でもした暁には同じ船に乗っている妻から夫の舵取りへの口出しが増えやすく、経済は豊かになってもプライベートに色が介在する余地がなくなりがちで、奥さん相手に自分のファンタジーは満たせないし言いづらいとか(性癖も色々)、女性もフィクションの影響で夫婦家族像に非現実的な期待が手放せないとか、日本のセックスレスの理由はきりがないぐらい色々挙げられるのだろうけど、こうなると皮膚接触どころか何年も手すら握ってない夫婦、まともな会話が成立していない夫婦とかも、もしかしたら珍しくないのかもしれない。(亀山早苗さんの著作をおすすめします。)

では親子間で触れ合いが多いかというと、小さいうちは触り放題でも、子どもは9~10歳ぐらいから親とふれあうどころか友だちとの関係のほうに比重を置きやすく、思春期になるとさらに嫌がられやすい。大学で実家を出たら会う時間自体がかなり減る。では祖父母を毎週末訪ねるかというと、社会人になれば土日も仕事に追われ、住まいも気軽に訪ねるには遠かったりする。


家族は長時間密に過ごすとトラブルの元になりやすいのはご存じのとおり。

たとえば、女性からよく聞かれがちな不満は「愛があれば察して当然なのにもう私に関心が無いのね」と想像が膨らみやすく「ということは、もう私のことを愛してないということなんでしょ」と結論が飛躍してしかも決めつけになりやすく、それがどのぐらいの飛躍かというと、髪形を少し変えてもこっそり整形しても疲れた顔しても気づかないとかが積み重なっていたりするのだけど、いちいち「今日は美容院で毛先を揃えてきたの?」とか「法令線になんか注入した?」とか「顔色悪いみたいだけど、大丈夫?午後だからメイクの色がくすんできてるのかもしれないよ」みたいにどこまでも細やかに気がつく男も、ちょっと気疲れしちゃうという人もいると思います。整形なんて、プロがしっかり診察すれば別だけど、そもそも自然な仕上がりで上手な整形をしたら初対面だろうが長いつきあいの関係であろうが、わからないですよ。ちなみにうちの相方はそのぐらいは朝飯前で、良いことも悪いこともこっちが感心するぐらいすぐに気がつく。アイシャドウや洋服がいつもと違うと即指摘が入ります。「それはそれでプレッシャー・・・」とひいた人もいるのではないでしょうか(笑)。

察してコミュニケーションって、男性に通じないだけではなく、外国の人にも全く通用しないので、もっと自分の意思や意向を言語化して積極的に伝えていくメンタルの強さが必要なのでしょうね。昔のように同じ町、同じ村で生まれて育って働いて死ぬみたいな時代と違って、日本国内でも一人ひとりのバックグラウンドがかなり多様な時代なので、逐一言語化しないと仕事も家庭内も思いは伝わらないという前提でいた方がよさそうです。「言わなくてもわかって」は、あとから事態が悪くなることの方が多いような印象です。(気持ちはわかるけどね・・・!)

いっぽう男性から聞かれがちな不満はというと、女性の前ではかっこつけたいけど、上から目線で叱りつけられたり横から口出しされていると「役に立たたずな俺」と認知するので、「僕の味方になってくれない、僕の居場所はここじゃない。」になり、ただでさえ女性にしてみれば言葉が足りない性質なのにさらにだんまりになり、他所に居場所を探しに行きやすい。お金を払ってでも女性から「わーすごい!」とか「素敵!」とか言われたいし、自分が役に立っていると思いたい。

女性には意味不明だと思うけど、あんまり女性が男性をけなしっぱなしにしていると、優しい男性からそのうち出てくる結論は「(僕は君を幸せにできない。だから)離婚しよう」です。一緒に暮らしている女性が嫌いになったとかじゃなくて、笑顔にしてあげられないふがいない俺なんかとはもう別れた方がいいという現状認識から導かれた離婚通達もあるのですよね。ここまでくると男女の解釈の違いというよりもむしろ乖離に近いレベルでちぐはぐしている。

子どもは成人を過ぎても「親は死ぬまで使える利用料無料のATM」とみなしやすく、子どもは目先の楽に手に入る銭の意味するところは将来親の介護役を期待されているから先の苦労とバーターで、与えた銭は親の支配欲の現れなのだが、子どもはそんなことは想定外で「タカれるリッチな親がいる自分は恵まれててラッキー♪」ぐらいにしか思っていない・・・みたいな話は、日本で実によく見聞きするあるあるですよね。

そして住まいが離れすぎていると会うこともかなわず、会いたいと思った頃には大抵の親は死んでいると相場は決まっていて、家族間で接触欲求がどれほど満たせるかというと日本はかなり満たしづらいほうに分類されるのではないか?と思います。

高齢者が精神的に不穏になるのも、孤立によるタッチングの欠乏が一因といわれます。コロナの影響でデイケア施設の休業、施設や病院でも外部からの面会者の訪問禁止などにより、高齢者の心身の状態が悪くなっているという話もニュースで聞こえてきていますよね。運動不足もあるけれど、スキンハンガーもあるように思います。

ちなみに、精神的に不安定な人や自閉症の人が(なかには感覚過敏の人もいますが)、重い掛け布団で落ち着きやすいというのは、皮膚接触の代替になる「重たくて、柔らかくて、暖かくて、包みこまれる」という要件を布団が満たしているからなのかな?と個人的に考えています。牛や馬も両側から挟むとおとなしくなると、アスペルガーの動物学者テンプル・グランディンの著書で知りました。

彼女は家畜にワクチンなどを接種する際に用いる締め付け機にヒントを得てHug machine (締め付け機)を設計し、これは現在では世界中の施設で使われているそうです。

そんな現代日本にcovid-19がやってきて、さらにヒトがアイソレーション状態に陥ったわけですから、経済不安やDVなど様々な不安要素はあるけれど、もともと家族がいようが独身だろうがバツイチだろうが会社に属していようがいなかろうが、自分自身でいることを楽しめずに「独りぼっちでさみしい」的に囚われている人が、この時期にさらに不安定な精神状態になったとしても無理もないんですよね。基本的には、ヒトは生きるために他者との皮膚の触れ合いと安定した良好な関わり合いを必要とする社会的な生き物です。これは食物への欲求と同様のレベルで、生存のためにプログラミングされている欲求なので、変わることはありません。

今のように積極的に相手に近づいて触れることがしづらい時期でも、目をかけて、声をかけて、気にかけることで、スキンハンガーは多少なりとも緩和するのではないでしょうか。ヒトが生きていくためには、家族に限定しない、社会における多様な繋がり合いが大事なのですから、いちいち他人にケチつけて生きるよりも、寛容な自分を育てたほうがいいですよね。ケチつけタイプを観察していると、まだ会社に在籍しているうちは社内に相手をしてくれる(というかせざるを得ない)人はいるけれど、退職後の60代とか70代はもう空恐ろしいほど孤立してますからね。

ちなみに、私はスキンハンガーというよりも人の肌や裸に触れるタッチコミュニケーションが生業で、読書や動画配信で学ぶ行為が著者や先生からお話を聞いているようなものなので、リアルでほとんど人と会わなくても平気で、私の人生の三大優先事項である自由と健康と自己成長に基づいてコロナ禍を最大限利用して沢山の本と動画で毎日存分に勉強しています。そして夜は毎日フィーちゃんが添い寝してくれるので、重たくて、柔らかくて、暖かくて、包み込まれるを満喫していますよ。ムフフ。フィーちゃんも私が毎日家にいるので、とってもうれしいみたいです!(←猫馬鹿)