ロレッタブログ

依存対象は心の松葉杖<つづき> - 2020.07.01

私はこの「心の酔い」が、メンタルの状態が徐々に失調していく人の表現としてあまりにしっくりきすぎて、激しく膝を打ちました!!!運動や食生活などのライフスタイルを改善する気が無い人の典型例とも共通していますよね。

仕事柄、長年いろんな人を定点観測しているとよくわかるのですが、いろんなものにしがみついている人ほど、いつまでも言い訳三昧です。ご本人が「変わりたい」「よくなりたい」「元気になりたい」と口で言う割には、実は変わりたくないのがよくわかります。人は言い訳をするときに最もクリエイティブになるらしいのだけど、言い訳を作り出す時間とその情熱を運動にシフトするだけで、かなりスッキリと良い方に変わるんじゃないでしょうか。

数十年生きてきても、生まれ育ちや躾や時代や年齢などのせいにして、自分で自分を良くしていく意欲や律する気概が無い人は少なくないですが、環境はその人を取り囲む人間関係を指すのだから、自分で自分が関わる人間を選びなおせばいいのです。人のせいにする、被害者ぶる、自分の頭で考えない、などの無為な他力本願頼みの己の愚かさに自覚的になれた人ほど、改善が早いかなあ。

週2回、3回といった定期的な運動を励行していると、月単位がそのうち年単位になり、5年、10年、いつのまにか20年・・・となり、周囲から強制されなくても「自分には運動するのが特別なことではなくて、当たり前なんです。動かない方が気持ちが悪くて体調がおかしくなります」みたいな自然な変化を遂げます。無理や見栄ではなく、ナチュラルに言えるようになるんですよね。生活習慣が乱れて健康管理意識が低く、問題意識も自律心も無いままの人たちとは自然と話題や生活時間も合わなくなるので、つきあう仲間や友人も変わってきます。何かとコロナで大変というニュースが聞こえてきますが、どんなに大変でも、健康な体と自分を支える人間関係があれば何とかなると思います。その2つを作るのは自分です。

20代、30代ぐらいの若いうちにそれに気づけた人は、あっという間に良い方向への階段を駆け上っていかれますね。ヒマワリが太陽の方を向いて、すくすく育っていくような印象を受けます。そういうお客様との出会いは、晴れやかでほんとうによいものですよ。

私が以前このブログで、「コロナの影響で自助グループのミーティングも開催がむずかしくなっているのでドロップする人が増えそう」と述べたのは、そうした自分を支える環境や仲間と離れることにになるからです。

いずれにしても、そのような人たちの多くは、自助グループの12ステッププトグラムの中で自分自身の生き方に対する内省を深めた結果、まるで哲学者や賢者のように思慮深く、そして謙虚な人柄へと変貌を遂げています。かつて薬物が止まらずに初めて病院に訪れた時とは、まるで別人です。妙な言い方に聞こえるかもしれませんが、依存症になったおかげで、以前よりも人間として深みを増し、人格的に成長したのではないかとさえ思うほどです。私たち依存症分野にかかわる援助者の多くは、そういう回復者に会うたびに、「ああ、これが回復というものなんだな」と感じ入り、依存症の回復支援にかかわる意欲がわいてくるものなのです。

しかしその一方で、厳しい現実があります。それは、そのような回復のパターンをたどる人は、薬物依存症者のごく一部にすぎない、という厳然たる事実です。これまで私は、薬物依存症外来を受診した患者のほぼ全員に、自助グループにつながることの意義を伝えるようにしてきましたが、実際にミーティングに一回でも顔を出してみたという人はごく少数です。その割合は、かなり楽観的に見積もっても一割にも達しません。継続的に参加するようになった人となるとさらに少なくなり、一回でも自助グループに顔を出した人のうち、せいぜい一割ぐらいです。

前に私は、「継続的にNAに参加している人の大半が、年単位の断薬を維持している」といいましたが、そのすばらしい治療成績は、あくまでもNAの雰囲気や目標が「自分に合う」と感じ、継続的に参加した人に関するものでしかありません。そして残念なことに、すべての薬物依存症者がNAを気に入るわけではなのです。

その意味では、自助グループによって回復した薬物依存症者は、薬物依存症の中でも「エリート中のエリート」といってよいでしょう。

これもまさに生活習慣改善と同じですね(笑)。いろんなジムやスタジオや体操教室に参加しても、5年10年と継続する人は非常に少ないといわれていて、ほどんとがクレジットカードからの月会費引き落としが続くだけの「幽霊会員」だそうです。そして、お風呂だけ入りにくる人はまた別の名前があって、それは「お風呂会員」と呼ぶのだそうです!ジムに勤務していたかたに教えていただきました(笑)。さらに、来店する人は決まっていて、同じ曜日の同じ時間帯にスタジオにいる人は大抵同じ人達になるのだそうです。うちもピラティスは皆さま曜日や時間帯を確保していらっしゃるので、同じですね(笑)。「予定があいたら来ます」みたいな人は本気度が低いので、そのメンタルが変わらない限り身体もよくなりようがないです。ちやほやされてきた人も難しいですね。

自覚的に、意識的に毎日を過ごさないと、あっというまに1年が過ぎますから、こういう厳しいけれど愛にあふれる松本先生の言葉を他人事にせず、自分にも起こりうることとして、心にしっかりと刻んでおきたいですね・・・!自分自身の癖や思考パターンを「ちょっとまずいな」と自覚したら、それをスッキリと修正していけるようになりたいものです。素直と感謝の両輪がないと、ヒトが社会で長く生きていくのはなかなか難しいのではないかと感じます。

もっと知りたいという方は、ぜひ下記の一番右側の「薬物依存症」をどうぞ。精神科医でもあまりやりたがらないという依存症治療の第一人者の松本先生(というか松本先生ぐらいしかいないのでは?)のこの本は新書ですが、中身はとても充実していて、かつ分かりやすいのでとてもお勧めです。

真ん中の本は、アルコール依存症等で精神病院への入退院は48回。30歳で窃盗などで刑務所にも3年間服役の渡邊洋次郎さん。これもとてもおすすめ。自傷はかまってちゃんと思われがちですが、そうではないというのもよくわかります。

そして、渡邊さんや高知東生さん、そして一番左の「三代目ギャン妻の物語」の田中紀子さんは、松本先生のいう『エリート中のエリート』なのでしょうね。