ロレッタブログ

エーラスダンロス症候群 - 2020.12.26

先日のこのブログ記事の「深くしゃがむ」を試してみて、全くできなくて愕然としているお客様が多いです。(←予想通り!)

どこまで深くしゃがめますか?

「私もともと身体が硬いんです。生まれつきだと思います」と言う人もたまにいらっしゃいますが、普段から動かない生活を送っているから組織が硬くなっているだけで、使わない機械がいざ動かそうとしても部品がサビついて使い物にならなくなるのと同じとお考えください。哺乳類ヒトで五体満足の健康体で生まれて、本来動くはずの可動域が出ていないひとは、動かさなさすぎだから動かなくなっているのです。エクササイズのセッションの時間以外にも、ご自分で動かして機能を回復させてあげましょう。

とはいえ、身体は柔らかければ柔らかいほど良いかというとそうではありません。

関節が弛緩しやすければ深部の感覚も低下するため、身体の各関節の位置のコントロールがしづらく、本来身体が安全に動かせる範囲である正常な可動域を容易に超えて動けてしまうために脱臼や捻挫などの関節や靭帯や筋肉がねじれたりズレたりすることよる怪我をしやすいのです。

バレエダンサーやヨガのプロフェッショナルなどは関節弛緩性がもともと高い人が多いと言われますが、仕事やパフォーマンスのために過剰な可動を余儀なくされるため、本来あるべき正常な可動域と深部感覚を培うためにピラティスに取り組む人が多いのです。

また、軟らかすぎる身体は、エーラスダンロス症候群マルファン症候群のこともあります。

エーラスダンロス症候群は、先天的なコラーゲンの産生以上による難病です。コラーゲンは体を構成するたんぱく質のうち全40%を占める大切なたんぱく質で、皮膚、靭帯、軟骨、骨などに大量に含まれています(そうなんです。骨ってカルシウムだけじゃなくてたんぱく質も大事なんです)。エーラス・ダンロス症候群はそうした部位に異常が現れます。

その柔らかさがどんなレベルかというと、いわゆる「私、身体がやわらかいほうなんです」というレベルではなく、手の指を後ろ(手の甲側)に曲げると、手の甲に指がくっついてしまうほど柔らかい。そのため脱臼しやすいなど怪我が多く、怪我や傷も治りにくかったりする。頬をひっぱると伸びきったゴムのようにどこまでも伸びてしまうなど(←画像検索してみてください)もあります。

仲野徹先生の著書によると「アクロバットの名手と言われる人は、ほとんどがこの病気である」と教科書には書かれているほどだそうです。たしかに、普通の人がどうストレッチしたところで不可能な柔らかさや曲がりきった姿勢がとれたりするのですから、このレベルの柔軟性の人は、ご本人のストレッチと鍛錬に賜物のケースもあれば、もともと構造が緩いコラーゲン関連の病気もあり得るのでしょうね。

→●エーラスダンロス症候群

このほかにも、「モデルなみに背がとても高くて手指もとても長くて、四肢もすらりと長くて、しかも身体も柔らかいなんていいよね!」と浮世離れした7頭身8頭身だったりしても、マルファン症候群という場合だってあります。「スタイルいいよね!」じゃすまされず、関節弛緩による怪我のほかにも大動脈解離や強度の近視や側弯症などをおこしやすいのだそうです。

→●マルファン症候群

ほかにも、難病というほどのレべルではないにしろ、もともと関節が緩い人が(特に女性)柔軟性が要求されるエクササイズやトレーニングが得意だからといってそればかりをやっていると、ますます関節や靭帯が緩くなり、より怪我をしやすくなる可能性が高いです。ご注意くださいね。

このように、ピラティスを身体の可動域や柔らかさ、硬さという面からとらえてもジョセフ・ピラティス氏がピラティスを「コントロロジー」と名付けていたゆえんが、よくわかります。すべては自分の脳で体の隅々までコントロールして随意に動かせることが、大切なのです。