Supersize Vs SuperSkinny - 2021.08.06
数年前(もう10年位前?)に観てびっくりしたイギリスの番組『Supersize Vs SuperSkinny』。
当時ブログにも記した記憶があるのですが、精神科医Christian Jessen医師の元で撮影されたドキュメンタリーで、調べてみたところYouTubeに番組のチャンネルもできていました。当事者もそうですが、ご家族やご友人やお客様など身近に摂食行動に問題を抱えている人がいるかたにもよいかもです。
この番組でChristian医師が取り組んだ摂食障害の治療法とは、拒食症(または拒食と過食の両方)の患者さん1名と、過食症の患者さん1名に、医師が管理する施設で5日間(番組の後半では2日間に変更されたそう)生活してもらい、その期間中はお互いの食事を交換し、語り合うというもの。超アナーキーな治療法なんです。
「・・・こんなのよく考えたな!!」と絶句するような「治療法」と呼ぶにはかなりアナーキーな内容ですよね。でもこれ、すごくよいアイデアかもしれないと思いました。これだけ真逆の状態の二人が向き合うと、同族嫌悪よりも、お互いの根底に似通った問題を見出す発見と内省のほうが促されそうです。もちろん精神科医がそばについていないと、危ないチャレンジですけどね。
そもそも患者さんが番組への出演をOKしてくれなければ成立しない番組ですが、ご本人も精神面ではよくなりたい意欲が欠片ほどであっても残っているからこそ出演を引き受けたのでしょう。自らの問題に直面化しにいくチャレンジと、それに対する怯えや葛藤のはざまで気持ちが揺れないわけがないでしょうから、勇気と決心に背中を押されて踏み出した大きな一歩ですよね。ご自身の回復のためには同じ摂食障害というフィールドの中で異なる角度で課題を抱えている者同士と出会い、過ごし、語り合うののは問題の直面化と内省にはうってつけな気がします。たった2日間や5日間とはいえ、こういう機会はやはりないよりはあったほうが好ましいのではないかと思います。依存症当事者の会は世の中にたくさんありますが、これは『依存症の当事者合宿』ですよね。
番組の冒頭では、お互いの前に建てられたプラスチックの筒に、各々が一週間で摂取する食べ物が上からぶち込まれる、という場面があります。
拒食症の人は、アルコールかカフェインかお菓子が多いというPoorな内容で、いっぽう過食症の人は、炭水化物か砂糖たっぷりのお菓子か揚げ物やチーズなどの油脂がメインの食べ物が多いというJunkな内容が予想通りです。
心理学的な側面から分析すると、世界の中でも特に日本人は「問題の直面化」を忌避する傾向が非常に強いそうです。
もしメンタルの病を抱えている人や、そうした様子の方に相談されたときにできることがあるとすれば、専門家の受診をすすめることぐらいしかないんじゃないかと思います。今日ちょっとだけ話を聞いたぐらいで片付く問題ではないからこそ、自分の力の及ぶ範囲をわきまえて、専門家にパスするのが正解だと思います。ご本人が混沌とした状態から本当に抜け出したいなら、ご本人が最も避けつづけてきた問題に主体的に直面していくしか解決法はないです。
現実と未来よりも、昔の傷を後生大事にしている人は少なくないです。誉め言葉を素直に受け止められず卑屈になって自分を過小評価するか、自分を過大評価して「癒されるのが好き。かまってもらうのが好き。そのままでいいんだよって言われるのが好き」に終始して自分で努力はしない、のどちらかにふれ過ぎていて、自分で可能性のドアを閉めている人はたくさんいますから。根っこが病気になっているんですね。
ですから、依存症に限らず「本人の問題は本人に返す」の原則に従うことが大切です。