ロレッタブログ

【スポーツ医学に基づいたピラティスの効果:後編】本橋恵美先生@PIVOT YouTube - 2025.03.09

先日ご紹介した、本橋先生のピラティス解説動画の後編が公開されました。

ピラティスでは、アイソレーション(分離)を重要な概念の一つとしていることや、脊柱の椎骨を1つ1つ動かすことなどが紹介されています。(本橋先生の呼吸法は「鼻から吸って、鼻から吐く」、シングルレッグストレッチでは膝に両手を当てたりなど、呼吸や手の置き場所や腹横筋の解釈などはピラティス流派ごとに若干異なります。)

アイソレーションとは、特定の関節や筋肉を単独で動かす能力を指します。アイソレーションにより、体の各部位を適切に動かし、他の部位に過度な負担がかかるのを防ぐことができます。この時、特にインナーマッスル(深層筋)を意識することに重点を置くことで、腰椎骨盤帯という体の中心部の安定性を高めながら動かします。

ただし、現代人は甚だしくアナトミー感覚が薄い人が大半です。「脳(頭)を使って体を動かす」ということをほとんどやってきていないので、この動画のようなとてもシンプルなエクササイズですら最初はまともにできません。当スタジオのお客様で来店初回からまともにできた人は現時点で0名です。

アウター優位や低筋力の人ほど、息を止めて反動やはずみをつけるような勢いに頼って動こうとします。そのように日常生活で動いているので、動きの切り替えし局面で怪我リスクが高まるのです。(「物を持ち上げた瞬間に腰にきた」「ボールを投げようと腕を振り上げたら肩がグキっとなった」「物をとろうと振り向いたら腰が変になった」など)。

なので、動きと呼吸を連動させることで、リラックスして動きへの集中力を高め、流れるようにスムースに動くことを重視します。


 

ただし、私たち人間が日常生活において、またスポーツやダンスなどのアクティビティまであらゆる活動を自立して行うために最終的に必要とされる能力は「全身のあらゆる関節を連動、統合させてスムースに動かすこと」です。なので、アイソレーションは、不安定な関節の動きを止め、動かしたい関節のみを動かすという、運動を統合する前の大前提となる能力です。ピラティスはアイソレーション運動だけを行う運動ではなく、アイソレーションはあくまでも基礎であり土台として行うものであり、アイソレーションを含む包括的な全身エクササイズ方法です。これにより、体幹強化、柔軟性向上、姿勢改善、そして身体制御能力の向上など、多面的な効果をもたらすことができます。

ピラティスで鍛える体幹やインナーマッスルは、シックスパックやお尻が大きくなったり胸に厚みがでたりなど、ビジュアルで映えるわかりやすいアウターマッスルとは異なります。けれども、地球上で生きる限り一生逃れられない「重力」に対して私たちの体を最も深部から支え、しなやかに動き続けられる体を支える土台が、安定した体幹なのです。

私たちの要になる筋肉はアウターであろうがインナーであろうが、自分で責任をもって育てようと頭(脳)を使いながら動かしつづけなければ、決して育むことはできません。ピラティスのような一見判りづらく大変地道なトレーニングを10年20年とコツコツ実践しつづけられるかどうかは、お金の多寡や時間やトレーニングスペースの有無ではありません。そもそも呼吸なんてどこでもできるし、マット1枚あれば始められるのがピラティスなんですから。

一番大切なのは、自分の姿勢に対する危機感と、「何がなんでも良くなりたい!」という切実な意欲、そして未来の自分を想像することができるインテリジェンスの有無、だと思います。焦らないで!良いものはすべて時間がかかるものだから。