ロレッタブログ

最近いくつかのスタジオを体験して、改めて感じた“本当に質の高いピラティス”とは - 2025.06.25

最近、複数のスタジオでグループセッションやプライベートセッションを体験しています。
インストラクターのご経歴は、理学療法士、バレエ歴20年以上、某ピラティス団体の認定資格保有など、まさに多種多様。
「姿勢分析」や「根本改善」をうたうクラスも多く、期待を込めて受講しました。

しかし実際に体験してみると、思わず首を傾げてしまうような場面がいくつかありました。


◆ 動作分析があいまいで、目的と負荷設定が噛み合っていない

一部のセッションでは、開始直後の姿勢評価が形式的で、私の本来の姿勢と異なる分析をしており、その(異なる)分析で本来ならばプログラムされるはずの動作が、実際のプログラム内容から抜け落ちているなど、分析とプログラムが全く結びついていないように感じました。
「姿勢を分析します」と言いながら、股関節可動域を確認していない脊柱の伸展を確認していない脊柱と骨盤の配列に明らかな問題があっても一切触れられずに進行していく場面も。

また、エクササイズの開始ポジションの指示が曖昧で、意図や身体への狙いがわからないまま進むケースも。何より、インストラクター自身のデモンストレーションが代償動作だらけで、本来の動きの目的がかえってぼやけてしまっている場面も少なくありませんでした。また、エクササイズのプログラミングが不思議なことになっているケースが非常に多く、運動や解剖に関する基礎理解の曖昧さを感じました。


◆ 日本人の身体に合っていないリフォーマー設定

多くのスタジオが採用しているリフォーマーは、欧米人向けに設計されたモデルのため、日本人の平均身長に対して合っていません。(日本人女性の身長のピークは20代後半:約157.9cm。徐々に縮んで60代:154.0cm
一見、日本人に合わせたモデルに見えても、ヘッドレストの高さが高すぎる設定になっていたり、キャリッジの素材が脊柱と骨盤の安定に寄与していないスプリングが弱すぎるといった点が見受けられました。

特にヘッドレストに関しては、仰向けで行うエクササイズにおいて、フラットからたった1段階高くしただけでも頸椎に過度な負担をかけてしまい、「このまま続けたら首を痛めてしまいそう」と感じる場面もありました。


◆ 脳神経系の再学習に不可欠な「集中」を妨げる環境

ピラティスは、筋骨格系だけでなく中枢神経系の再教育(retraining)にも深く関係します。
特に動作の精度や内観力を高めたいクライアントにとって、「静寂」や「集中できる環境」は不可欠です。

ところが、あるスタジオではBGMの音量が大きすぎて、インストラクターの声が聞き取りづらく、指示が途中から“ただのBGMの一部”のようにかき消されてしまっていました。
あの状況で、正確な身体感覚を育むのはかなり難しいと感じました。


◆ 印象に残った「聞きたいことが、聞かれなかった」エピソード

体験前に提出したカウンセリングフォームには、「体験レッスンでインストラクターに聞きたいこと」という欄があり、複数のチェック項目を記入して提出していました。しかし、当日その点には一切言及されずにセッションが終了。正直、非常に残念に感じました。

これは「質問の内容が悪かった」という話ではなく、クライアントの関心や疑問に向き合おうという姿勢が、接客や指導以前の“土台として欠けていた”と感じる出来事でした。


◆ 安全性への配慮が欠けていた、あるスタジオでの体験

ある体験レッスンでは、「これは近いうちに大きな事故が起きるのでは…」と強く不安を感じた場面がありました。そして実際にその日、参加者がマシンから転落しかける事態が発生しました。

以下、その流れを簡単に記します:

  1. スプリング強度の設定をすべて参加者に委ねる方式で、インストラクターが一切関与しないスタイル。初心者が万が一弱すぎたり強すぎるスプリングを選択しても、特に指摘されないまま進行するスタイル。

  2. キャリッジ上でフットバー向きに正座した状態から、膝立ちに移行しつつストラップを前方に引く動作(Straight Forward)が指示されましたが、このポジションは膝やバランス能力に不安のある方には大変危険な構成です。 案の定、ある参加者がフットバー方向に転倒しかけ、非常に危険な状況に。それに対してインストラクターが発した言葉は――「え?なんで今落ちたの?」という、状況把握や安全管理を欠いた反応でした

  3. 両手にダンベルを使ったサイドスプリッツ・スクワット(プリエアウトではない)やダンベルオーバーヘッドを20回以上連続実施した後、さらにキャリッジレッグ・アブダクションを続ける構成。20~30代の参加者たち(男女)は疲労困憊しながら間違ったフォームで必死に動いており、もはやピラティスではなく、無計画な高負荷筋トレの様相でした。私(48歳)は強度強めのスプリング設定で全て動きましたが、リフォーマーの特性を理解せずに私と同じ同じ強度に設定してしまった参加者は、相当きつかったんじゃないでしょうか。あまりにも可哀そうで気の毒です。立位から転落が無かったことが幸いでしたが、そのうち誰かが落ちてもおかしくないと思います。

こうしたプログラムが適しているとすれば、
若くて高い運動能力があり、怪我歴もなく、自分の身体の限界を把握し、安全性を自己管理できるような一部の層に限られます。また、このスタジオでは事前カウンセリングで怪我や疾病歴の確認も一切ありませんでした。


◆ Lorettaのセッションが大切にしていること

これらの体験を通して、改めて感じたのは──
「正確に動くこと」「分析に基づいて進めること」「身体の構造に対する深い理解」「対話と信頼」
そのどれもが、“あって当然”ではないということです。

Lorettaでは、以下のような点を徹底しています:

  • 姿勢・動作の精査に基づいた個別プログラミング

  • クライアントの目的・状態に沿った最適な負荷と種目の選定

  • 動作のスタートポジションと意図を明確に伝える言葉がけ

  • インストラクター自身の見本が“正しく、無理のない動き”であること

  • 必要な静けさと集中を守る、神経系にやさしい環境づくり



◆ 最後に

今後も様々なスタジオでの学びを重ねていく予定です。
“自分のセッションを見直すため”でもあり、空前のブームを迎えたピラティスの“業界全体の質を見つめ直す視点”を持つためでもあります。

今回の体験を通じて、自分が大切にしてきた原点に、改めて立ち返ることができました
このような気づきを、日々のセッションやレッスンに還元していけたらと願っています。