ロレッタブログ

「できない」時期の先に、脳が拓ける。語学と運動に共通する“神経の再配線”の話 - 2025.07.20

英語やスペイン語、中国語、フランス語などの新しい言語を学び始めたとき、多くの方が「何を言っているのかまったくわからない」「すぐに頭が疲れる」「本当にこの方法で話せるようになるの?」と不安になるものです。

これは、あなたの能力が低いからではありません。
単に、脳と身体がまだその“新しい刺激”に慣れていないだけです。

この“わからない” “できない”時期に脳内で起きているのは、まさに神経回路の再編成=ニューロプラスティシティ(神経可塑性)のプロセス。
そしてこれは、まさにピラティスを始めたばかりの方が経験するプロセスと、根本的に同じです。

 


なぜ語学学習とピラティスが似ているのか?

たとえば、英語なら「RとLの発音の違い」を聞き分けること。/ʃ/と/s/の発音を使い分けられること。ピラティスでは「股関節の可動」「仙骨と腰椎間の動き」「肩甲骨の動きと安定」を感じ分けること。

どちらも、今まで使ってこなかった感覚器官や筋肉、神経経路を“目覚めさせる”訓練に他なりません。

そして、どちらも最初は「意識しなければできない」もの。
けれど、繰り返しのインプットと適切なアウトプットを積み重ねることで、次第に無意識の領域に落とし込まれ、自動化されていきます

まさに、「語学習得=脳と言語器官のトレーニング」、「ピラティス=脳と身体の協調再構築」です。


“最初の違和感”こそ、変化の入り口

語学学習においては、「頻出単語1000語の習得」が飛躍の鍵だと、言語学者のポール・ネイションは述べています。

ピラティスにおいても同様に、「基本的な呼吸」「骨盤と背骨のニュートラル」「脊柱の動きのコントロール」など、地味に見えるけれど極めて本質的な土台を丁寧に積み重ねることが、後の“感覚の爆発的な進化”につながります。

そしてこの時期に共通するのが、「自分には無理かも」と感じやすい期間があること
でも、そこを過ぎた瞬間から、突然視界が開けるような感覚を味わえるのです。


“わからない・できない”は、伸びしろのサイン

私が英語でピラティスを教える訓練を始めた当初、自分の舌がまるで自分のものではないような感覚に陥った時期がありました(笑)。
実のところ、ピラティスのエクササイズよりも、英語を話すほうがよほど脳と筋肉(特に口輪筋や舌、口腔・喉周りの筋肉)を疲弊させたほどです。

それでも、私には確信がありました。
神経系の再配線には、まず“質の高い基礎”が不可欠であり、次に“正確さと意識的な修正を伴う反復練習”が必要であるということを、ピラティスの指導と実践を通じて知っていたからです。

間違った発音や文法を丁寧に修正しながら繰り返すこと。
何度も、何十回も同じ音声を聞き、音とリズムに慣れていくこと。
そうして少しずつ、脳の処理速度や筋肉の協調性が変わり、「なんとなく聞こえる英語」から「使える英語」へと変化していきました。

 


音を出す場所を理解すれば、大人でも言語は習得できる

たとえば「舌の位置」「口の開き方」「喉をどのように使うか」——
これらを明確に理解し、意識的に調整していくだけで、たとえネイティブでなくても、そして大人になってからでも、ある程度のレベルには誰でも到達できます。

身体に置き換えれば、「骨盤のニュートラル」や「脊柱のアーティキュレーション」のようなものでしょう。
初めて聞くと難しそうに思えることでも、正確な理解と反復があれば、感覚は育っていくのです。


「できる自分を夢見るだけ」の学習では、変化は起きない

私が英語の練習を途中で投げ出したり、挫折感を覚えることがなかったのは、“学習が習得に至るには地道な努力が必要”という現実を、ピラティスの世界ですでに実感していたからです。

「何もしなくても、そのうち話せるようになる」「とりあえず聞き流していれば耳が慣れる」「もっと若いころからやっていればできたはず」——そんな甘い期待を持ったまま、“理想の自分”ばかりを思い描いても、残念ながら現実は何も変わりません(笑)学習しなけば習得できるはずがなく、その先の習熟に至るはずもないのです。

ある日突然身体が動かなくなるとすれば、それは難病か外傷です。過去にやってこなかったことはできません。今やらなければ、未来もできるようになりません。年齢を言い訳にするのは言い訳を探している証拠です。今の行動が未来を変えます。過去にやらなかった結果が今です


言語も身体も、「癖に気づき、修正する」ことで変わる

結局のところ、言語の習得も、身体の再教育も、本質は同じです。
自分の中にある“癖”や“偏り”に気づき、そこに意識を向けて、丁寧に修正しながら、繰り返し積み重ねていくこと。

それが、語学であれ、姿勢であれ、動きの質であれ、本物の変化を生み出す唯一のプロセスです。


「学びを楽しめる身体」は、人生を豊かにする

Lorettaには、語学に挑戦しているお客様がたくさんいらっしゃいます。英語はもちろん、スペイン語に取り組んでいる方も。
こうした“学びに開かれたマインド”を支えるのが、“学びに応えられる身体”だと、私は常々感じています。

もし今、何かを学びたいけれど「頭がついていかない」「身体がついていかない」と感じている方は、もしかするとそれは、脳と神経と筋肉の“回線工事中”なのかもしれません。

焦らず、丁寧に。
言語も身体も、神経系のサポートがあれば、いつからでも変わります。


ご興味のある方は、脳と身体をつなぐ“感覚のチューニング”としてのピラティス。ぜひ一度体験してみてくださいね。