“なんとなくの違和感”の正体──身体が教えてくれる、スタジオ選びで見落としがちなこと - 2025.08.03
輸入型フィットネスに足りない、動作バランスと安全性の視点


1. 話題・おしゃれさで選ばれる海外発スタジオの増加
ここ数年、世界観のある空間やデザイン性の高い「海外スタジオ発のフィットネス業態」が、日本でも急増しています。
SNS映えする空間や、非日常的な演出──初めて体験するには魅力的ですし、通いたくなる気持ちもよくわかります。
けれど実際に身体を動かしてみたとき、「何かしっくりこない」「微妙にやりづらい」といった、言葉にしづらい“なんとなくの違和感”を感じたことはないでしょうか?
その違和感の正体は、身体が小さな危険信号として発している“構造的なズレ”かもしれません。
2. 動作設計における“運動面の偏り”
あるスタジオの体験レッスンでは、動きのほとんどが矢状面(前後方向)に集中していました。
スクワット、ステップアップ、ローイング……いずれも真っ直ぐ前後に動く種目で構成されており、前額面の動きは1種目のみ、水平面の動きは皆無でした。
動作面の偏りについて指導者に質問したところ、「身体が三つの面で動く」という概念自体が共有されていない印象でした。具体的にどのように質問したかと言うと、「今日のクラスは矢状面の動きばかりで、前額面の動きはアーノルドプレスのような動きのみでした。水平面の動きも全く無かったのですが、もっと多面で動かせるクラスはありませんか?」と質問したところ、全くその質問の意味が理解できなかったようで「??・・筋トレメインやピラティスメインのクラスなど、いろいろあります!」と答えられたのですが、これは私の問いに対する回答になっていません(苦笑)。
その方の動きはとても美しく、熱意も感じられたからこそ、設計思想や構造理解がないまま流れてしまっている現状に、少し惜しさを感じてしまったのです。
先進国の中でも運動習慣が著しく低い日本人にとって、こうした三面すべての動き(矢状面・前額面・水平面)による再教育は極めて重要です。
身体のバランスを整えるには、多面性が欠かせません。
また、以前の体験記で記しましたが、今回訪問したスタジオも、日本人女性の平均身長に合致するどころか、あまりにもマシンのサイズ自体が大きすぎましたし、乗り降りするにはマシンの配置も高すぎました。
男性も多く通えることを売りにしていたのですが、アメリカ成人男性(平均身長約175cm)、ヨーロッパの主要国男性(175cm~184cmの範囲)と、日本人女性(約158.5cm)を比較すると、その差は約16.5cm~25.5cmもあります!一般的なジムのマシンですら、アメリカ人女性(フィットネス業界で活躍するプロの方)から「自分には大きすぎて使いづらい」という声を聞いたことがあります。さらにもっと小柄な日本人の女性に、使いやすいはずがありません。
最近いくつかのスタジオを体験して、改めて感じた“本当に質の高いピラティス”とは
3. 空間設計・衛生・安全面に感じたこと
別のスタジオでは、カーペットの上で素足のままレッスンを行うスタイルでした。
一見柔らかくて安心感があるように見えますが、私は足裏の角質が溜まっておらずツルツルなので(エクスビアンスの恩恵です!)、カーペット上で足が滑りやすく感じましたが、フローリングだと床に落ちた汗で足が滑り転倒して負傷する…などの事故が起こりやすいかもしれませんから、むしろ少し摩擦が起こるカーペットを張ることが転倒を予防している、という考えもあるのかもしれません。
しかしながら、カーペットは落ちた汗がしみ込む素材でもあるのでニオイや水虫など衛生面の心配を感じる方もいらっしゃるかもしれません。状況や体調に応じて、滑り止め付きソックスなどを使うと安心して参加できる場面もあると感じました。
一方で、足底筋膜炎のある方や、足裏の脂肪組織が薄い方や、足アーチが低下して中足骨がフロアに当たると痛むような足の状態にある方には、衝撃を和らげる意味でカーペット素材であることがメリットになる可能性もあります。
このカーペット素材は本国ブランドの指定で、全世界の店舗で統一された世界観を保つことが最優先されているようでした。
SNSや口コミでは、「滑る」「におう」「それなりの会費を払っているのだからシャワールームを設置してほしい。じゃなければ銭湯の割引券ぐらい配って欲しい」などの声も見かけたのですが、そもそもオフィスやテナントのために作られた雑居ビルです。月会費も都内の相場で特別高いわけでもありません。シャワールーム常設を希望される方は、おそらくバスタオルも無料提供を望むでしょう。
運動後に汗を流すところまでスタジオ側に求めるなら、フィットネスの大手企業が運営しているシャワー完備のスタジオや、あるいはこのスタジオ近辺に山ほどあるラグジュアリーホテルの高級会員制ジムや(入会金100万円以上とか)、パーソナルジムでも入会費3万円以上、月額利用費も3万円以上、別途都度利用料約1万5千円、更に別途インストラクター指名料も発生するようなスタジオ(つまり、週1利用でも月額最低10万円位の価格帯)に行ったほうがよいのでは・・・?
そもそもあのエリアに銭湯なんてあるんだろうのか?銭湯の入浴料金なんてせいぜい500円程度だろうから、自腹で行けばいいだけでは?むしろ、自腹で500円を出せない人が生息しているエリアのようにも思えないのだけど・・・首をかしげるようなクレームが書かれていたりしました。
このように、現場側の裁量では変えられない部分も多いと感じました。
そうした背景を知らずにクレームが寄せられる状況に、サービス業とはいえ運営側のご苦労も強く共感しています。
4. Lorettaとの違い──“身体の質”に応じた設計思想
Lorettaでは、「身体がどう感じ、どう動くか」に焦点を当てて、マシン(イクイップメント)やプロップ(補助道具)を厳選しています。
大規模な空間演出は難しいながらも、一つひとつの選択に身体の仕組みと感覚の働きを重ねています。
床素材は足裏の感覚を妨げないものを選び、必要に応じて神経系を刺激できるアイテム(例:Naboso)も使用。
アロマの香りがほんのり香るおしぼりや、感覚入力に配慮した細やかな設計は、すべて“内観力の回復”と“自律した身体操作”のための環境づくりとして意図されたものです。
Lorettaが目指しているのは、見た目の高級感や演出ではなく、「身体の再教育」という目的に忠実であること。それが、私が大切にしている設計思想の核です。
5. 本当に必要なのは「翻訳」と「咀嚼」
海外メソッドが悪いわけではありません。
むしろ、競合の多い都市部では差別化戦略として海外ブランドや空間演出を採用したくなる背景は理解できます。
ただし、「輸入=模倣」ではなく、“翻訳と咀嚼”の視点が本来は不可欠です。
契約条件により日本での修正が難しい場合もありますし、現場で違和感に気づける人材が不足していたり、気づいていても多店舗展開のスピードが優先されているという現実もあるかもしれません。
一方で、運動習慣が極端に低い日本人にとっては、動作バランス・感覚・安全性を重視した設計こそが最優先事項であるはずです。
以下の記事でも触れましたが、日本は先進国の中でも、運動習慣のある人の割合が極端に少ない現状があります。
先進国のフィットネス参加率 日本は何位?
運動に慣れている層が多い国と同じプログラムをそのまま適用しても、荷重下で自体重すら支えられない人が非常に多い日本において、それが適切とは限らないのです。
そうした状況を踏まえると、同じ構成を提供したときに、果たしてどれだけの人が無理なく安全に実施できるのだろうか……と考えさせられました。
6. Lorettaの強み──“違和感”を言語化し、動きで整える場所
Lorettaは、そうした“なんとなくの違和感”を見過ごさず、丁寧に言語化し、動きによって整える場所でありたいと考えています。
さらに、外部資本やフランチャイズ、スポンサーの制約が一切ない完全独立型の個人スタジオだからこそ、気づいた課題に即座に対応できる柔軟性と自由度も、私の大きな強みです。
見た目や流行ではなく、「その人の身体に本当に必要なこと」を軸に、プログラムも空間も設計しています。
それがLorettaであり、これからも“感覚を取り戻すスタジオ”としての姿勢”を貫いていきたいと思います。
