ロレッタブログ

女性の一生を科学で見つめる──世界の研究者が語る「ライフコース・アプローチ」の最前線 - 2025.11.09

先月、群馬大学主催の国際セミナー「Nutrition and Fertility: The Importance of Couples’ Diets Before Pregnancy」をオンラインで視聴しました。


ハーバード大学のJorge E. Chavarro教授が登壇され、妊娠前の食習慣と妊孕性の関係について、最新の疫学データを基に解説。野菜や果物などに使われる農薬など、日常の食と環境が生殖機能に及ぼす影響にも触れられ、非常に学びの多い内容でした。
こうした国際的な研究動向を直接知る機会は貴重であり、「食」と「健康」のつながりを改めて深く考えさせられました。似たテーマの動画(不妊治療における栄養とライフスタイルの影響)に焦点を当てたを見つけたので、ご興味のある方はこの動画を視聴してみてください。

極端な肥満や痩せではなく健康的な体重を維持すること。肉ばかりではなく魚を積極的に摂取することでオメガ3脂肪酸(またはクリルオイルなどフィッシュオイル)を十分に満たすこと。葉酸、ビタミンB6、B12、などで細胞の代謝や遺伝情報の合成をサポートすること。環境ホルモンの影響の可能性などについて述べられています。

ここで忘れたくないのは「妊活中だからバランスの取れた食事と体重管理を基本にする」のではなく、妊娠を望もうが望まなかろうが、老若男女どのライフステージにおいても「バランスの取れた食事と体重管理が健康の基本」だということ。

Jorge E. Chavarro教授のご著書はこちら。


 

このような国際的な研究交流の流れの中で、12月4日には「群馬大学未来先端研究機構 国際シンポジウム」が開催されます。テーマは「女性の健康に対するライフコースアプローチ」。
オーストラリアのクイーンズランド大学から Gita Mishra 教授と Jenny Doust 教授、イギリスのラフバラ大学から Rebecca Hardy 教授が登壇される予定です。

複数の動画を見つけたので早速視聴してみました。いずれの研究も「女性の健康を“年齢の問題”としてではなく、“生涯にわたるプロセス”としてとらえる」共通の視点でつながっているようです。


 

Gita Mishra教授は、1996年に続くオーストラリア大規模縦断研究「Australian Longitudinal Study on Women’s Health」および国際コンソーシアム InterLACE を代表研究者として、子宮摘出術や早発閉経が慢性疾患の関連について膨大なデータを解析しているようです。

↓この動画では、子宮内膜症の有病率と発生率を推定し、この疾患が女性の生涯にわたる健康に及ぼす影響、特に早期の要因、症状、生活の質、および妊娠の合併症との関連性について述べられています。子宮内膜症を「ライフコースの視点」から捉える理由は、内膜症は単なる生殖年齢の疾患ではなく、女性の生涯を通じて慢性的かつ反復的に症状が現れる炎症性疾患であり、他の婦人科疾患の併発リスクや妊娠・出産において合併症のリスクも高く、また閉経も自然閉経よりも両卵巣摘出術による外科的閉経を受ける可能性が約8倍も高いということから、大変重要だと理解しました。


↓この動画は子宮摘出術早期または早発閉経の予測因子と健康への影響に焦点を当てたウェブセミナーでした。子宮摘出術を受けるリスクが高いとされるケースについてオーストラリアの女性を対象にした調査では、低い教育レベル、高BMI(過体重および肥満)、初潮を10歳未満または11歳まで迎えた場合、多産、20歳以下での出産などがリスク因子として関与することを示し、早期からのモニタリングと社会的支援の必要性を訴えています。また子宮摘出術を受けた女性では血管運動症状(ほてりや寝汗)、抑うつ、糖尿病などのリスクが上昇することを報告しています。特に、早期初経・未産・低体重の組み合わせは早発閉経リスクを高める傾向があり、これらの女性に対して早期のモニタリングと健康支援の重要性を強調していました。

Rebecca Hardy教授は「A Life Course Approach to Menopause(更年期に対するライフコース・アプローチ)」の中で、幼少期・思春期・成人期の生活習慣や社会環境が更年期の時期やその後の健康状態に影響することを示し、「人生全体で健康を積み重ねる」視点の重要性を提唱しています。

 8歳の時点で評価された正常範囲内での認知機能の低さが、閉経の早期化と関連していることが判明したことなど、認知機能と生殖機能の相互関係を示唆するデータなど、更年期の管理や政策におけるライフコース・アプローチの重要性を強調しています。この発想は、症状を「今だけ」で切り取らず、“これまでの積み重ね”として理解することの重要性を教えてくれます。
単なる加齢現象としての更年期ではなく、「生涯的な積分の結果」として理解する姿勢が印象的でした。


Doust教授は「The History and Consequences of Overdiagnosis」において、過剰診断の歴史的背景と現代医療への影響を検証。
がん検診や遺伝子検査の普及によって、本来経過観察でよいケースまで“患者化”してしまう構造的リスクを指摘し、「科学の進歩を真に健康の利益につなげるためには、診断と治療の“精度の倫理”が問われる」と論じています。
このテーマは、予防医療や健康に関心のある方は定期健診や人間ドッグの一般的な検査項目には含まれていないような様々な検査も積極的に受けていたりするでしょうから、健康維持に積極的に取り組まれている人には非常に示唆に富む内容だと思います。


三者の研究に共通しているのは、「健康を部分的・瞬間的にとらえず、人生の文脈で理解する」という視座。
これは、ピラティスやエステティックにおける私自身の実践──つまり、「今日の行動が未来の健康をつくる」という考え方──とも深く重なります。

そして、私は医療従事者ではありませんが、このようなセミナーが一般の立場からも視聴できることをとても嬉しく思います。
長期的な健康維持の実践に関心のある方、ご自身でも何かしらの課題を感じている方、あるいは身近な人に相談を受けることのある方にとって、学術的に信頼性の高い知識へアクセスできる今の時代は本当にありがたいと感じます。日進月歩の動画翻訳機能のおかげで、英語が得意ではない人でも視聴のハードルが下がってきています。
正しい情報に触れることは、自分と周囲の未来を守る第一歩です。

Lorettaでは、こうした世界の最新知見を学びながら、体・心・社会環境を多角的に見つめ、お一人おひとりの“未来の健康”を支えるケアを続けてまいります。
学び続けること、そして誠実にそれを現場で還元することが、私の使命だと感じています。

【参考リンク】
群馬大学未来先端研究機構 国際シンポジウム案内ページ
https://www.giar.gunma-u.ac.jp/international-symposium_uq2025/

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