英語Podcastとフィガロと、私の就寝前ルーティン - 2025.11.27

一日の仕事と勉強を終えた夜は、静かな整えの時間です。夕食と入浴のあと、Power Plate Pulseで筋膜リリースとリンパドレナージュなどのセルフマッサージ、オイルやクリームでのボディケア、最後にストレッチ。職業柄、この全てを自分で理論的にきちんとできるのが良いところです。電話もメールも鳴らないこの時間に、英語のセミナーやPodcastをBGMに流します。
今秋に集中的に聴いていたのは、「Food Psych」という英語のPodcastでした。パーソナリティは、クリスティ・ハリソン(Christy Harrison)さんという管理栄養士・ジャーナリストの方です。彼女は自身の経験を出発点に、アンチ・ダイエット(Anti-Diet)やIntuitive Eating(直感的な食べ方)の視点から、食と身体の関係を捉え直す発信を続けています。アメリカでは多くの栄養士教育が体重中心のアプローチ(Weight-Centric Approach)に寄りがちで、それが社会のダイエット文化を支えてしまう現実がある——そんな構造への批判も、彼女のテーマの一つです。
専門家であっても「健康である/健康的に見える」規範を内面化しすぎると、ルール遵守が目的化し、オーソレキシアのような不健全さに近づくことがある。「クリーンな食事」という言葉はトレンドですし、オーガニックしか口にしない、添加物ゼロ、など何かと徹底しやすい人には耳の痛い話かもしれませんが、真っ直ぐに向き合う価値があると感じています。
「就寝前に摂食障害やダイエット文化の話を聴くなんて、重くないですか?」と感じる方もいるかもしれません。けれども、私にとって寝る前の30分〜1時間は、もともと「活字をじっくり読む時間」でした。小説や専門書を開き、静かな部屋で文字と向き合うのが、子どものころからのもう数十年来の習慣です。最近はそれが、英語のPodcastやオンラインセミナーに置き換わっただけ。営業の電話もメールもない、宅急便も来ない、施術もセッションもない、何にも邪魔されない就寝前のひとときは、私にとって心身をリセットする大切な時間です。
彼女が繰り返し指摘するのは、アメリカの多くの管理栄養士の教育やキャリアが、「体重を減らすこと」を最優先にした体重中心のアプローチ(Weight-Centric Approach)の上に築かれているという現実です。(最近はBMIや体重よりも腹囲が基準になってきているのは好ましいことです)
肥満はアメリカの社会問題ですが、とはいえ「痩せていることが健康の証」であり、「体重を落とすことが正しい」、といった前提が当たり前になると、結果的に社会全体のダイエット文化を支える役割を、栄養士自身が担ってしまうことになります。番組では「このダイエット文化そのものが、摂食障害やその周辺の苦しみの温床になっているのではない」、とかなり鋭く批判しています。
さらに厄介なのは、食と栄養の専門家である管理栄養士ほど、「健康であること」「健康的に見えること」という規範を深く内面化しやすい、という点です。Christy曰く、栄養士の多くは、「完璧な食生活」を追求するダイエット文化の影響を受けてこの職に就いたという背景を持つことが多く、すでに摂食障害や不健全な食行動のリスクが高い状態にあるそうです。そして、理想的な食事ルールや“正しい”生活習慣をクライアントに指導する立場だからこそ、そのルールを自分自身にも厳格に適用してしまい、「健康的な食生活」のつもりが、いつの間にかオーソレキシア(健康志向が行き過ぎた摂食障害)のような不健全な状態へ傾いていくことがある、とChristyは語ります。


「食や栄養に詳しい人ほど、ダイエット文化のど真ん中に組み込まれやすく、健康を追いかけるうちに心が追い詰められていく。その一方で、精神科医のようなスーパービジョンの仕組みはなく、専門職側のメンタルサポートは置き去りにされがちだ」という指摘には、私も深くうなずきながら聴いていました。
肥満の方に鬱傾向が多いのは、私も美容と健康の現場でよく感じています。しかし、極端の痩せの方も精神疾患や精神的な問題を抱えている人が少なくないはずです。どちらも、ただの生活習慣の問題だけではないでしょう。そうした患者やクライアントに接する管理栄養士が、仕事の中で患者やクライアントの摂食問題に深く関わることで、自分自身の過去の摂食障害が刺激されるリスクが高まりますが、それを処理するための専門的な場(スーパービジョン)が無いとなると、個人的な問題が悪化しやすいでしょう。
エステやピラティスの現場にいても、「健康のため」のつもりが、いつの間にか禁止事項だらけの生活になってしまっている方や、摂食障害の方、体型への不安で頭がいっぱいになってしまっている方にお会いすることがあります。また、過去に摂食障害を経験された方が、今も「食べること」への恐怖からサプリメントに過度に頼ってしまったり、カロリーや栄養素の数字を細かく計算し続けてしまうこともあります。食べ物の“中身”や手段が変わっても、「太ることに対する恐怖」や「数字で細かく管理していないと不安」という根っこの強迫的な感覚は共通しているように感じます。
だからこそ、Food Psych や、同じChristyが展開している “Rethinking Wellness” のPodcastやニュースレターを通じて、アンチダイエットやIntuitive Eatingの視点、そしてウェルネス産業の光と影について、英語で学び続けることは、私にとって仕事と地続きの大事な勉強時間になっています。
日本とアメリカでは文化も医療制度も異なりますが、それでも「健康のため」という言葉のもとに、自分を追い詰めてしまう構図には共通点が多いと感じます。そうした海外の議論をインプットしたうえで、日本のお客様の現実に引き寄せながら、自分の言葉でお伝えしていくことが、私の小さなライフワークのひとつです。

そして、そんなテーマの英語をBGMに身体をゆるめていたら、フィーちゃんがするっと膝の上に飛び乗ってきて、「いい加減、勉強はそのくらいにして遊んで!」と言わんばかりに、喉を鳴らしながら丸くなりました。
スマホを手に取ってシャッターを切ると、暗闇の中にフィーちゃんだけが浮かび上がる、不思議な写真が撮れました(笑)
夜のルーティンは、誰かに見せるための「映える習慣」ではありませんが、明日の私の仕事の質や、長い目で見た自分の健康や知識を支えてくれる、大切な土台だと思っています。
寝る前の時間を、SNSのタイムラインやゲームではなく、自分の身体と心に戻っていくための時間にしておくこと。華やかさはなくても、こうした静かな習慣が、忙しい日々の中で「自分の錨」のような役割を果たしてくれている気がします。これからも、中野坂上の小さなサロンの一室で、英語と書籍や資料とフィガロに囲まれながら、そんな夜を積み重ねていきたいと思います。
