ロレッタブログ

2025年のお気に入り動画<Part 3>英語の発音と姿勢改善ピラティス ネット時代の「自己流」の限界と、Noticingと本物のコーチが変える上達スピード - 2025.12.19

英語の発音も、姿勢改善のピラティスも、「自己流でそれなりに頑張っているのに、あまり変わった気がしない」という声をよく耳にします。

最近、英語の発音やリスニングの勉強をしていると、いつも頭に浮かぶのは、「語学の習得」と「機能的で正しい動作の習得って、本質的には同じプロセスだな」ということです。先日、Lois Tarlacgren さんがカナダの名誉教授 Tracey Derwing 先生にインタビューしている動画を観ながら、その感覚がさらに確信に変わりました。テーマは

・なぜ外国語では訛りが出るのか
・大人になってからの発音トレーニングはどこまで通用するのか

第二言語の発音研究で世界的に知られている先生です。


 

「ネイティブみたいな発音」はレアケース。でも「よく通じる発音」は十分目指せる

Derwing 先生が強調していたのは、大人になってから完全にネイティブのような発音になるのはごく稀だけれど、

・高い明瞭度(intelligibility)
・聞き取りやすさ(comprehensibility)

は、適切なトレーニングで十分に伸ばせる、という点です。つまり、「ネイティブそっくり」をゴールにするよりも「相手にストレスなく伝わる発音」を目標にしたほうが、現実的で、人生の選択肢も広がるという考え方です。

これは、運動の世界でもそのまま当てはまります。

SNSで見かけるようなアスリートの最速や極限まで敏捷な動きやシックスパックは、一部の人にしか必要ありません。
多くの人にとって本当に大事なのは「痛みが少なく、安定して、日常生活を安心して送れる身体」です。姿勢改善ピラティスで目指したいのも、まさにこの「機能として使える身体」です。


 

短期間の介入でも意味はある。でも「魔法」ではない

この動画でもう一つ印象的だったのは、「発音指導は短期間の介入でも効果がある」と明言していたことです。数週間〜数か月ほどの集中レッスンでも、学習者の発音の聞き取りやすさが有意に改善するケースは多く報告されています。

ここで大事なのは、

  • 短期間でも方向性を正しく修正できる
  • ただし、一晩で別人のようになるわけではない

という現実をきちんと理解しておくことです。これは、ピラティスや機能的トレーニングでもまったく同じです。

  • 10回で一生分の姿勢が整う
  • 3か月で何十年分の運動不足を取り返す

そういった「魔法のプログラム」は存在しません。ですが、「今まで自己流ではなぜうまくいかなかったのか」を特定し、そこに的を絞って集中的に介入すれば、数か月でも身体は確実に変わり始めます。

発音にせよ、動作にせよ、正しい方向に向けた短期集中的な介入」+「その後の継続とメンテナンス」このセットで考える必要があります。


 

改善のスタート地点は必ず「気づき(Noticing)」から

Derwing 先生の議論の中で、私がもっとも重要だと感じたキーワードが「Noticing(気づき)」です。
改善には、この「気づき」が絶対に鍵になります。

動画の中で、こんな例が紹介されていました。あるスペイン語話者は、英語を話すとき、語頭が S + 子音(例えば “sp” や “st”)のときに、無意識に余分な母音 /e/ を挿入する癖(epenthesis)がありました。“special” が “especial” のように聞こえてしまう、というパターンです。本人にとってはそれが「普通の話し方」なので、それが「通じにくさの原因になっている」という自覚はまったくありません。

ところが、訓練を受けた教師に「語頭の S + 子音の前に、余分な /e/ が入っていますよ」と具体的に指摘され、そこに注意を向けて練習してみると、驚くほど簡単にその癖をやめることができた、というエピソードです。この話が示しているのは、

  • 自分では「普通」だと思っているパターンが、実は問題の原因になっていること
  • その存在に気づくためには、外部からの具体的な指摘が必要な場合が多いこと

の2つです。動作も、まったく同じです。

  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、写真に撮ると首が前に出ている
  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、少ししゃがんでいる
  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、少し後方に倒れている
  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、横モモと前モモで立っている
  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、反時計回りに捻じれている
  • 自分では「まっすぐ立っているつもり」が、足裏の外縁で立っている
  • 「胸を動かしているつもり」が、実は首だけを動かしている
  • 「骨盤を動かしているつもり」が、実は腰だけを反らしている
  • 「お腹を使っているつもり」が、首と肩の力みになっている
  • 「お腹を使っているつもり」が、腰を潰し曲げている
  • 「お腹を使っているつもり」が、内臓脂肪と皮下脂肪で凸状に張り出て、腹筋が使えなくなっている

こうした「つもり」と「現実」のズレは、自分一人ではほとんど気づけません。
だからこそ運動でも、「本人が気づいていないエラーを指摘し、正しい方向に導く教師」の存在は不可欠です。

Noticing(気づき)が増えるほど、学習の解像度は上がります。
語学でも身体でも、「どこまで細かく気づけるか」が、そのまま上達スピードを決めてしまうといってよいと思います。


 

訓練を受けた教師から学ぶということ

Derwing 先生は、「最も理想的なのは、発音指導の訓練を受けた教師を見つけること」だとはっきり述べています。その理由として、例えば次のような点が挙げられていました。

的を絞った指導:
 訓練を受けた教師は、生徒の発音のどの側面が明瞭度や理解度を妨げているのかを評価し、
 問題を引き起こしている具体的な領域に、学習者の注意を向けさせることができます。

優先順位の決定:
 意味にほとんど影響しない些細な違い(例えば “the” を少し “dhe” に近く発音するなど)に時間を浪費せず、 実際にリスナーに大きなストレスを与える要素(母音の聞き分け、単語の切れ目、プロソディなど)に集中できます。

学習コストの最適化:
 限られた時間とエネルギーで、「どこから変えると一番効果的か」を一緒に決めていけるので、
 遠回りや無駄な練習を減らすことができます。

ピラティスや機能的トレーニングも同じです。

  • 全身の状態を評価して、ボトルネックを見つける
  • その人の生活・年齢・既往歴などを踏まえて、優先順位をつける
  • 安全性と効果を両立させながら、徐々にレベルを上げる

このプロセスがあるかどうかで、半年後・1年後の結果はまるで違います。


 

インターネット上の「なんちゃって講師」に要注意

動画の中では、「インターネット上には『アクセントコーチ』と名乗る人が大勢いるが、中には訓練を受けていない人や、詐欺的なケースもある。かえって発音を悪化させることもあるので注意が必要だ」という警告もありました。

  • 肩書きだけ “Accent Coach” “Pronunciation Specialist” と名乗っている
  • 発音教育の専門的なトレーニングや研究背景がない
  • 科学的根拠のない独自メソッドを、高額で売っている

そのような指導に頼ると、本来なら直さなくてもいい箇所を無理に矯正されて不自然な話し方になったり、本当に改善すべきポイントが放置されてしまったりします。そしてこれは、今のピラティスブームとも非常によく似ています。

空前のピラティスブームの影で、

  • 短期講座だけ受けて、現場経験がほとんどない「ペーパードライバーインストラクター」
  • 自分の身体の使い方さえまだ十分に理解できていないのに、人に教えているケース
  • 解剖学的な安全性や機能性よりも、「映える動き」や「派手な動き」を優先するクラスやコンテンツ

といった現実があります。

そのような環境で「一生懸命」トレーニングすると、語学と同じように「頑張れば頑張るほど、よくないパターンが強化される」危険が非常に高いです。姿勢や動作がむしろ悪化したり、痛みや怪我につながる可能性すらあるのです。

今は、発信する側だけでなく、「選ぶ側」にも一定以上の目が求められる時代だと感じます。


 

 優れたコーチは羅針盤

目的地までの航路を一緒に描く存在優れたコーチと運動プログラムというプロセスは、羅針盤を使って航海するようなものだと思います。地図も羅針盤もなしに、ひたすら闇雲に船を漕いでいても、たどり着くのは目的地ではなく、たまたま流れ着いたどこかの岸かもしれません。

しかし、きちんと訓練を受けた教師=羅針盤があれば、

  • 自分が今どこで道に迷っているのか(どの動き・どの音がエラーなのか)
  • 同じ失敗パターンを、どこで繰り返しているのか
  • どこから修正すれば、目的地に最短距離で近づけるのか

を、具体的に知ることができます。

目指すべき目的地が

  • 語学なら「ちゃんと通じる英語」
  • 身体なら「ちゃんと使える機能的な動作ができる身体」

だとしたら、その航路を一緒に描き、ときどき進路を修正してくれるのが、本物のコーチです。


 

語学と機能的な動作習得に共通する、5つの原則

語学コーチたちの話と、自分のピラティス・機能トレーニングの経験を重ねると、両者には、次のような共通原則があると感じます。

1)ゴール設定は「映え」や「見た目」ではなく「機能」
英語なら「ネイティブみたいに聞こえるか」ではなく、「どれくらい相手にストレスなく通じるか」。
身体なら「インスタ映えのポーズ」ではなく、「痛みなく、安定して動ける“本当に強い身体”でいられるか」。

2)短期集中+中長期の継続
数週間〜数か月の集中的な介入で「方向性」を正しい方へ修正し、その後は、自主練と定期的なメンテナンスで習慣化していく。

3)質の高いフィードバック
自己流では気づけないズレを、客観的に指摘してくれる存在を持つ。
Noticing(気づき)の数を増やしてくれるコーチは、実質的に「上達の加速装置」です。

4)多様な刺激が必要
語学なら、リスニング、リーディング、会話、シャドーイング、アウトプット。
身体なら、ピラティスだけでなく、歩く・走る・押す・引く・ねじるなど、多方向・多関節の動き。
「これだけやっていれば十分」という単一メニューでは、どうしても偏りが出ます。

5)失敗と修正を前提にする
はじめからうまくできる人はいません。むしろ、たくさん間違え、その都度修正できる人ほど伸びていきます。エラーは「ダメな証拠」ではなく、「気づきのチャンス」です。


 

「ちゃんと通じる身体の使い方」を育てる

私自身、英語学習においても、ピラティス指導においても、「一夜にして別人になる魔法」をお渡しすることはできません。その代わりに、

  • いま何がボトルネックになっているのか
  • どこから手をつけると、最も効率よく変わり始めるのか
  • ご自宅で何をどのくらい続けるとよいのか

これらを一緒に整理しながら、「ちゃんと使える身体」の両方を、少しずつ育てていくお手伝いはできます。もし、

  • 語学学習でも運動習慣でも、「自己流で頑張っているのに、なかなか変わらない」と感じている方
  • 中野坂上や中野区周辺で、姿勢改善や根本改善のピラティスパーソナルを探している方

そんな方は、一度プライベートセッションでご相談ください。中野坂上の小さなサロンから、あなたの「ちゃんと使える身体の使い方」と、長く付き合える機能的な身体づくりの航路を、一緒に描いていければと思います。