食べすぎと心のこと。サロンでできること・できないことと、摂食障害の相談先 - 2025.12.04

中野坂上のプライベートエステ&ピラティスサロンLorettaには、長く通ってくださるお客様が多くいらっしゃいます。
前回の記事「オルトレキシアとは何か──『正しい食』が心を縛りはじめるとき」では、ヘルシー志向が行き過ぎて、食べ物の「正しさ」にとらわれてしまう心の状態について書きました。今回はその続きとして、「食べすぎてしまうこと」「飲みすぎてしまうこと」と心の関係について、少しだけ触れてみたいと思います。
そのうえで、エステやピラティスを提供する立場として、どこまでがお手伝いできる範囲で、どこから先は医療や専門カウンセラーに託すべきかという「線引き」と、摂食障害に関する公的な相談窓口、そして一冊の本をご紹介します。
食べすぎ・飲みすぎは、珍しい悩みではありません
Lorettaのお客様の中には、長い年月をかけて「食べること」や「飲むこと」との付き合い方に悩んできた方も少なくありません。
例えば、
・気がついたら満腹を大きく超えるまでむちゃ食いをしてしまう
・お腹が空いているわけではないのに、止められない衝動で食べてしまう
・ストレスや寂しさを紛らわせるために、お酒の量がどうしても増えてしまう
・糖尿病や肥満が気になりながらも、食べ方を変えられない
こうしたお話を、これまでにも何度も耳にしてきました。
中には、医療的な診断がついていてもおかしくない「むちゃ食い」「過食」の背景を抱えているのではないか、と感じるケースもあります。ただ、ご本人は「自分は摂食障害だ」とは認めたくなかったり、「そこまでではない」と思いたかったりすることが多いのも現実です。
こうした『やめたいのにやめられない』行動とドーパミンの関係については、過去のブログ『アンナ・レンブケ教授が語る「ドーパミン中毒」と依存症』でも詳しく触れています。アルコールや無茶食い症候群、砂糖脂肪中毒など、さまざまな依存とドーパミンの関わりにご興味のある方は、こちらもあわせてご覧ください。
アンナ・レンブケ教授が語る「ドーパミン中毒」と依存症 ──日本メディアのインタビューを見て考えたこと
摂食障害は「意志の弱さ」ではなく、心と体の病気
拒食や過食、むちゃ食い、食べた後の強い罪悪感や自己嫌悪など、「食べること」との付き合いが苦しさの源になってしまう状態は、専門的には「摂食障害」と呼ばれます。
ここで大事なのは、摂食障害は「意志が弱いから」「自制心がないから」起きるものではない、という点です。心の状態、性格傾向、これまでの生育歴や家族関係、ストレス環境、体の栄養状態やホルモンのバランスなど、さまざまな要素が絡み合って起きる、心と体の病気です。
そのため、本来であれば早い段階で専門家に相談し、長期的な視点で治療やサポートの方針を考えていく必要があります。ただ実際には、ご本人が受診をためらったり、家族もどこに相談していいかわからないまま時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
Lorettaでできることと、あえて「できない」とお伝えしたいこと
私は、エステティックとピラティスという形で、からだと生活の土台づくりをお手伝いしています。
・姿勢や呼吸を整えること
・睡眠の質や日中の疲れやすさを軽くしていくこと
・肌やむくみ、冷えなどのケアを通して、「自分のからだを雑に扱わない感覚」を取り戻していくこと
こうしたサポートは、サロンの専門領域です。
サロンでお話を伺い、寄り添うこともできます。からだの状態だけでなく、お仕事やご家庭の状況、これまでのご経験などを少し教えていただくことで、ケアの方向性が見えやすくなることも多いからです。
ただ、ここは「心の悩みをどこまでも話し続けるためのカウンセリングルーム」ではありません。限られた予約時間のなかで、からだのケアと動きの改善という本来の目的の時間も、大切に守りたいと考えています。
私は、専門の心理カウンセラーではありません。お客様の人生のすべてを背負ったり、いつまでも子どもの面倒を見るような親代わりになることはできませんし、それはお互いにとって健全な関係ではないとも思っています。
だからこそ、サロンでできるのは、
・今のからだや生活の状況を一緒に整理すること
・必要に応じて、信頼できる医療機関や相談窓口をご紹介すること
といった「橋渡し」までです。
そこから先の専門的な治療やカウンセリングは、医療機関や専門家の役割です。
この線引きをはっきりさせることが、かえってお客様自身の自律性を守り、結果的により良い支援につながると考えています。

摂食障害の相談ができる公的な窓口
ここからは、私自身が信頼できると感じている、公的な相談窓口をご紹介します。いずれも、怪しい民間療法や自己啓発ではなく、公的機関や都立病院が運営する窓口です。
1)摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン
https://sessyoku-hotline.jp/
摂食障害全国支援センターが、国立病院の心療内科に委託して開設している「摂食障害 相談ほっとライン」です。拒食症や過食症などで困っているご本人や、ご家族・関係者からの電話相談に対応し、早期発見と受診につなげることを目的に運営されています。
診察や治療そのものを行う窓口ではありませんが、
「どこに相談したらよいか分からない」
「家族としてどう関わればいいか迷っている」
といった段階でも相談できる入り口として、知っておいて損のない窓口だと思います。
2)東京都摂食障害支援拠点病院(東京都立松沢病院)
https://www.tmhp.jp/matsuzawa/sesshoku/index.html
東京都は、東京都立松沢病院を「摂食障害支援拠点病院」に指定し、摂食障害患者さんやご家族への専門的な相談・治療支援、医療従事者や関係機関への研修などを担う中核的な病院としています。
サイト内には「東京都摂食障害相談窓口」の案内があり、摂食障害に関する相談から受診先の案内まで、一連のサポートが行われています。都内在住・在勤の方で、「まずは公的な窓口に相談したい」という場合に、一つの選択肢になるはずです。
Lorettaの本棚に置いている一冊
「食べ過ぎることの意味 過食症からの解放」
フットバス中にお読みいただける、エステルームの本棚には、摂食障害に関する一冊も置いています。

食べ過ぎることの意味 過食症からの解放
ジェニーン・ロス 著/斎藤 学 監訳/佐藤 美奈子 訳(誠信書房)
この本は、精神医学・臨床心理学のジャンルで刊行されている、専門性の高い一冊です。
著者であるジェニーン・ロスさんご本人も、長く過食に苦しんできた方です。その経験と、多くのクライアントとの対話を通じて、
「どうして食べ過ぎてしまうのか」
「食べ物が、どんな役割を肩代わりしてきたのか」
を丁寧にたどっていきます。
痩せるテクニックやダイエットのノウハウではなく、
「空腹や満足感をきちんと感じること」
「食べること以外の方法で、不安や虚しさと付き合うこと」
といったテーマが、静かな文章で綴られています。
もちろん、一冊の本を読めばすべてが解決するわけではありませんし、症状の重い方にとっては、専門治療のほうが何よりも優先されるべきです。
それでも、「食べることとの付き合い方を、少し離れた場所から見つめ直してみたい」と感じられたとき、ふと手に取っていただけたらいいな、という思いで、本棚に加えています。
自分を責めるより、「一人で抱え込まない」選択を
むちゃ食い、過食、肥満、糖尿病、アルコールの多飲…。
どれも、現代の日本社会では決して珍しいことではありません。
それでも多くの方が、
「こんなこと、恥ずかしくて誰にも言えない」
「自分の意志が弱いだけだ」
と感じて、長いあいだ一人で抱え込んでしまいます。
もし、この記事を読んでくださっている方の中に、
・食べることや飲むことが、純粋な楽しみではなく「苦しみの元」になっている
・やめたいのにやめられない罪悪感で、毎日が重たく感じる
・身近な誰かの様子が心配で、どこに相談したら良いか分からない
という方がいたら、どうか一人で抱え込まず、今日ご紹介したような公的な窓口も、選択肢の一つとして知っておいてください。
Lorettaは、中野坂上の小さな上質エステサロンであり、プライベートピラティススタジオです。「中野坂上 エステ」「中野坂上 ピラティス」「根本改善 ピラティス」などのキーワードで検索されることも増えてきましたが、どれだけ専門性を高めても、「摂食障害を治す医療機関」にはなれません。
だからこそ、サロンでできることとできないことの線引きを大切にしながら、必要な方には、信頼できる医療や相談窓口の情報をお渡ししていきたいと思っています。
前回の記事「オルトレキシアとは何か──『正しい食』が心を縛りはじめるとき」と、今回の「食べすぎと心のこと」の2本が、食と心の問題を少し離れた場所から眺め直す、小さな手がかりになればうれしく思います。
この記事が、どなたかにとって「相談してもいいかもしれない」と思うきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。
むちゃ食い症の心理社会的背景については、国立精神・神経医療研究センターの専門医による動画シリーズもあります。こちらは、別の記事であらためてご紹介したいと思います。
