ロレッタブログ

むちゃ食い症の専門医動画をきっかけに、「食と心」の続きを考える - 2025.12.07

ピラティスマットの上に立ち、足裏の感覚に意識を向けている女性の足元のイメージ

むちゃ食い症の「負のスパイラル」とからだの土台づくり──専門医動画から考える食と心

先日、国立精神・神経医療研究センターの専門医による「むちゃ食い症」の解説動画をあらためて視聴しました。
むちゃ食い=エモーショナルイーティング(Emotional Eating)が止められない背景にある心理社会的な要因や、「負のスパイラル」について、とても分かりやすく整理されている内容でした。

当サロンにも、「むちゃ食い症」という診断を受けているわけではないものの、食べすぎや止まらない間食、アルコールや甘いものへの依存感など、「むちゃ食い症候群」にかなり近い状態で長く悩んでこられたのだろうな、と感じるお客様が少なくありません。

今回はこの専門医の動画を入り口に、むちゃ食い症の背景を一般の方向けにかみ砕きつつ、サロンとしての立ち位置と、お手伝いできること・できないことをあらためて整理してみたいと思います。

「正しい食」にこだわるあまり心が縛られてしまうオルトレキシアについては、前回のブログ「オルトレキシアとは何か──『正しい食』が心を縛りはじめるとき」で詳しく触れています。こちらもあわせてご覧いただくと、「食と心」の関係を立体的に捉えやすくなるかと思います。


 

1.むちゃ食い症は「意志の弱さ」の問題ではない

むちゃ食い症は、「ちょっと食べすぎてしまった」というレベルを超えて、短い時間に自分でも驚くほど大量に食べてしまうことを、繰り返してしまう状態を指します。
食べている最中や食べ終わったあとに、「自分でコントロールできていない」「やめたいのに、やめられない」という強い苦しさや自己嫌悪を感じるのが特徴です。

専門医の動画の中では、

・むちゃ食いは、ストレスや孤独感、自己否定といった「つらさ」から自分を守るための、一種の対処行動になっていること
・一時的には気分が楽になるため、脳と心が「この方法でしのぐしかない」と覚えてしまうこと

といった点が丁寧に説明されていました。

周囲からは「食べすぎ」「意志が弱い」と見えがちな行動の裏側に、長年積み重なってきた生きづらさや、自尊心の低さ、対人関係の疲れなど、さまざまなテーマが絡み合っているのだろうと思います。

「食べ方」そのものだけを見て、「もっと我慢しましょう」「太らないように気をつけましょう」と言い続けても、根本的な解決につながりにくいのは、このためです。


 

2.動画で語られていた「負のスパイラル」

今回ご紹介するのは、国立精神・神経医療研究センターの専門医による「むちゃ食いや過食の負のスパイラルについて」の解説動画です。

この動画の中で印象的だったのが、「むちゃ食い症や肥満が悪化していく負のスパイラル」の説明です。
ここでは私なりに、一般の方向けに少し言い換えながらご紹介します。

1)ストレスや孤独感、自分への失望が積み重なる
2)食べることで一時的に気持ちが紛れ、「楽になった」「生きていてもいいのかもしれない」という感覚を得る
3)そのあとで、体重や健康への不安、強い罪悪感や自己嫌悪に襲われる
4)「次こそは絶対に太らないようにしよう」と、極端なダイエットや厳しすぎる自己管理を自分に課す
5)体も心も疲れ切り、いずれ我慢の限界が来て、再びむちゃ食いに戻ってしまう

このサイクルが繰り返されるうちに、

・体重や血糖値の変動が大きくなる
・日中のだるさや集中力低下が進む
・「どうせ私はダメだ」という自己評価の低さが固定化されていく

といった、二重三重の負担が重なっていきます。

大切なのは、「むちゃ食いそのものを責める前に、この負のスパイラルから抜け出しやすい環境づくりや支え方を、一緒に考えていく必要がある」という視点だと感じました。


 

3.サロンで出会う、「むちゃ食い症候群」に近いケース

中野坂上の小さなプライベートエステサロン&ピラティススタジオであるロレッタにも、30〜60代の女性のお客様を中心に、こんなお話を伺うことがあります。

「仕事のプレッシャーが大きくなると、夜にお菓子やパンを止まらなくなるまで食べてしまう」
「1日の終わりに、アルコールとつまみがないと気持ちが切り替えられない」
「甘いものを買わないと決めても、ストレスが溜まると結局まとめ買いして、一気に食べてしまう」

ほとんどの方は、「ただの食べすぎ」「更年期でイライラしているだけ」「自分の意志が弱いから」と、あくまで「性格の問題」だと考えておられます。
無茶食い症という診断名や、専門の治療があること自体を知らない方も、実は少なくありません。

医師ではない私が診断名をつけることはありませんが、長年お身体を拝見してきた感覚として、「これは無茶食い症と呼ばれる状態にかなり近いのだろうな」と感じるケースは少なくありません。

週に一度の食べすぎだけでは、いわゆる肥満体型や内臓脂肪型肥満を長く維持し続けることはあまりありません。体型や検診の数値の変化から逆算すると、実際には週二〜三回以上、衝動的な無茶食いが長年繰り返されているのだろう、と推測せざるを得ないケースもあります。

私自身は医師ではありませんから、「無茶食い症です」とお伝えすることは決してありません。
それでも、専門医の動画で語られていた心理的背景や負のスパイラルを聞きながら、「あの方も、似たような苦しさを抱えてこられたのかもしれない」と感じる場面は多々あります。

「ただの食べすぎ」では説明しきれないつらさが、食の問題の背後には確かに存在しているのだと思います。実際にお話を伺っていると、気分の落ち込みや意欲の低下が長く続いているなど、いわゆる抑うつ的な状態が背景にあるのだろうなと感じることも少なくありません。


 

4.サロンで「できないこと」と「できること」を、もう一度はっきりさせておく

ここで改めて、ロレッタのようなサロンで「できないこと」と「できること」を、少しコンパクトに整理しておきます。

まず、サロンでできないこと

  • 摂食障害(むちゃ食い症・神経性過食症など)の診断や、治療方針の決定
  • 投薬や減量指導など、医療行為にあたること
  • 専門的な心理療法やカウンセリング(医療機関や専門家の領域です)

「むちゃ食い症かもしれない」「健康診断の数値や体重が明らかに心配」という場合、優先されるのはサロンではなく、医療機関や専門の相談窓口です。その場合は、サロンの中だけでなんとかしようとせず、心療内科やメンタルクリニックなど専門機関に相談する選択肢もとても大切だと考えています。
具体的な相談先や窓口については、前回のブログ「食べすぎと心のこと。サロンでできること・できないことと、摂食障害の相談先」で詳しくご紹介していますので、そちらもあわせてご覧ください。

食べすぎと心のこと。サロンでできること・できないことと、摂食障害の相談先

では、サロンだからこそできることは何でしょうか。

1)からだの感覚を取り戻すお手伝い
強いストレスや長年のむちゃ食いを経験された方の中には、「からだの声」そのものが分かりづらくなっている方が少なくありません。
お腹がすいたのか、それともただ不安で落ち着かないのか、疲れているのか、イライラしているのか。その違いが自分でもよく分からず、「とりあえず食べる」「とりあえず飲む」でごまかしてしまうこともあります。自分の感情が不安定だったり、不安になったときに逃避をするために食べることは健康的ではありません。
こうした「お腹がすいた」「もう十分かもしれない」「今日は疲れているから、無理はしない」といった内側の変化を感じ取る力は、専門的には「内受容感覚」と呼ばれることもあります。プライベートピラティスで呼吸や姿勢、立ち方・歩き方を丁寧に見直していくことは、この内受容感覚を少しずつ取り戻し、「お腹がすいた」「満腹になってきた」「今日は疲れているから、無理はしない」といったサインにもう一度気づけるようになるための土台づくりにもつながります。

2)「がんばりすぎているサイン」に一緒に気づく
食事や運動に関して、「こうでなければいけない」というルールが増えすぎているとき、人は知らないうちに自分を追い込んでしまいます。
ピラティスやエステの前後の会話の中で、「このスケジュールは少しきつすぎるかもしれませんね」「これ以上はお一人で抱え込まないほうが良さそうですね」といった形で、からだと心の限界に気づくきっかけをお渡しすることはできます。

3)生活リズムとからだの土台づくりのサポート
十分な睡眠、過度ではない運動習慣、肩や首を固めすぎない姿勢の整え方などは、どなたにとっても「土台」となる部分です。
中野坂上のロレッタでは、姿勢改善や根本改善を目指すパーソナルピラティスと、リンパや血行を整えるエステを組み合わせながら、「無理なく続けられる日常の整え方」を一緒に探っていきます。

4)必要に応じて、医療機関への受診をおすすめすること
お話を伺う中で、「これはサロンの範囲を超えている」と感じるケースについては、無理にサロンの中だけで解決しようとせず、医療機関や専門窓口への相談をおすすめします。
私自身がお客様と一緒に考えたいのは、「どこまでをサロンで支え、どこからを医療や専門家につないでいくか」という線引きです。


 

5.むちゃ食い症について、専門医が解説している動画のご紹介

むちゃ食い症について、より専門的な情報を知りたい方のために、国立精神・神経医療研究センターの専門医による解説動画をいくつかご紹介します。
いずれも医療機関による公式な情報ですので、自己判断に走るのではなく、必要に応じて医療機関でのご相談のきっかけにしていただければと思います。

1 無茶食い症の症状について
https://youtu.be/bXXzWi7k5yA

2 無茶食い症の治療について
https://youtu.be/wLNRy67nIHY

3 無茶食いや過食の負のスパイラルについて
https://youtu.be/wNunB3cFwao

4 無茶食い症の回復過程について
https://youtu.be/i6s30ymQBkM


 

心とからだを落ち着かせるように静かに注がれたカモミールティーのイメージ

6.むちゃ食い症かもしれないと感じている方へ

もし今、「食べることが自分でコントロールできない」「頭ではやめたいのに、やめられない」という状態で苦しんでおられる方がいらしたら、それは決して「あなたの意志が弱いから」「自分に甘いから」ではありません。

食と心の問題は、とても根深く、複雑です。
だからこそ、一人きりでがんばるよりも、専門医の動画や信頼できる情報を入り口にしながら、必要に応じて医療や専門職のサポートも借りていただきたいと思います。

「正しい食」に縛られてしまうオルトレキシアのことや、「食べすぎと心」とサロンの役割については、これまでの二本のブログでも整理してきました。
今回ご紹介したむちゃ食い症の動画とあわせて、A・B・Cの三本の記事が、どこかで誰かの助けになる小さなヒントになれば幸いです。

ロレッタは、摂食障害そのものを治療する場所ではありません。
それでも、からだの土台を整え、自分の身体を雑に扱わない時間を積み重ねることで、「食」と「自分」との距離感が少しずつ変わっていくお手伝いはできると信じています。