【前編】グループでは変わらなかった人へ。20代と50代に同じ運動が合うはずがない理由 - 2026.01.29

ここ数年、ピラティスは空前のブームと言っていいほど広がりました。
中野坂上周辺でも、マシンピラティススタジオやグループクラスを見かける機会がぐっと増えたと感じている方も多いと思います。
一方で、こんなご相談も増えています。
「それなりに回数は通ったのに、姿勢も腰痛もあまり変わらない」
「クラスのレベルについていくのに精一杯で、自分に合っているのか分からない」
「頑張って動いているのに、肩と首ばかりしんどい」
今日は、そんな「頑張っているのに変わらない」方に向けて、
・グループレッスンの構造的な限界
・なぜ“個別対応”が必要なのか
について、まず前編としてお話しします。後編では、そのうえでどうグループとパーソナルを組み合わせていくと良いのか、具体的な考え方をお伝えします。
1.20代と、40代、50代に同じ運動が合うはずがない
まず大前提として、二十代の方と四十代、五十代の方に、同じ運動が適しているはずがありません。
本来であれば、
・年齢
・性別やホルモンバランス
・運動経験や体力レベル
・静的姿勢
・動的姿勢の正確性と代償動作の有無
・関節の状態や既往歴(ケガ・手術・持病)、関節可動域(柔軟性)
・体重や体組成
・仕事や生活習慣、睡眠やストレス状況
といった条件に応じて、「選ぶべき動き」も「避けた方が良い動き」も変わります。
ところがグループレッスンは、「その時間に集まった全員に対して、同じプログラムを提供する」ことが前提です。インストラクターは、なるべく多くの人に“そこそこ合いそうな平均値”を狙ってクラスを組み立てますが、それでも
・誰かには負荷が強すぎる
・別の誰かにはまったく物足りない
ということが必ず起こります。
この構造を踏まえたうえでグループを賢く使うのは良いのですが、「自分の年齢・体力・体質にぴったり合った運動処方」を期待してしまうと、どうしてもギャップが生まれます。
このように、グループクラスはそもそも個別性を求めて参加する場ではないのです。各人の個別性に配慮し続ける目的で設計されたセッションは、質の高いプライベートセッションで提供される、全く別のプログラムです。
2.「ビュッフェ」と「病院食」で考える、グループとパーソナルの違い
この違いは、食事にたとえると分かりやすいかもしれません。

高血圧、糖尿病、腎臓病、肥満、痩せ、またはその予備軍の方、そしてアレルギーを持つ方が、ビュッフェや一般の飲食店を利用するとき、本来は
・食材
・調理法
・カロリー
・塩分量、脂質量、糖質量
などを踏まえてメニューを選ぶ必要があります。
ところが多くの場合、そこまで細かく表示されていません。すると、日頃から栄養や食材、調理技術の知識をある程度のレベルで備えている人でなければ、「自分にとって本当に望ましい一皿」を選ぶことは難しくなります。

見た目がヘルシーそう、野菜が入っている、和食だから大丈夫そう……
そう信じて選んだメニューが、実は塩分も糖質も脂質もオーバーだった、ということは珍しくありません。
一方で、
・疾患やアレルギーに配慮した専門店
・管理栄養士が設計した宅配食
・個別対応の食事サービス
といったものは、「ある一定の悩みや体質・疾患のある方でも安心して利用できるように設計されたサービス」です。その究極の形が病院食でしょう。味や華やかさよりも、「安全性」と「その人の状態に合わせた栄養管理」が最優先されています。
運動も、実はこれとまったく同じ構造を持っています。
・栄養表示のないビュッフェ → グループレッスン
・管理栄養士つきの個別メニュー → パーソナルセッション
グループレッスンでは、その日その場所に集まった全員に、一律のメニューが提供されます。インストラクターはモディフィケーション(軽めのバージョン)を用意して「きつい方はこうしましょう」と声をかけてくれることはあると思いますが、各エクササイズに
・関節へのストレス度
・その人の既往歴に対するリスク
・今日の体調との相性
がラベリングされているわけではありません。
結局、「これは今の自分に合っている動きか」「今日はどこまでやるべきか」を判断するには、受け手側にかなり高いレベルの“身体知”が必要になってきます。
慢性疾患やアレルギーのある人が、「自分には配慮が必要だ」と理解していながらも、一般客向けの飲食店やビュッフェだけを日常使いし、成り行き任せでメニューを選び続けているようなものです。それで病状やアレルギーが悪化しないことを期待するのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
これは、四十代や五十代にプライベートセッションが向いている、という話ではありません。もしたとえ年齢が二十代であっても、側弯症、故障や怪我や手術歴、関節弛緩性が高い人、体が硬すぎる人、衰弱レベルの低筋力、産前産後などの状態にあれば、その個別性に応じた運動指導を優先すべきなのです。
3.「しんどい=運動した」と思い込んでいないか
その身体知がないまま、何となく周りに合わせて動いていると、
「インナーやコアではなく、無理な姿勢でアウターマッスルだけを総動員する自己流フォーム」
を延々と反復することになりがちです。その結果として、
・過緊張だらけの間違った動作を体に刷り込む
・関節や椎間板に、じわじわと負担をかけ続ける
という状態になります。
つまり、「ヘルシーだと思って選んだ食事が、実は自分の体質にまったく合っていなかった」という、運動版のミスマッチです。
そしてこの
・過緊張だらけの間違った動作による疲労
・フォームが崩れたまま心拍数だけが上がる“しんどさ”
・汗をかいて心拍数が上がった=運動した
を、そのまま「ピラティス」だと思い込んでいる方は、実はかなり多いと感じています。
汗をかいた、息が上がった、筋肉がパンパンになった。
この「分かりやすい刺激」だけを運動の成果だと捉えてしまうと、本来のピラティスで整えられるはずの
・機能改善
・姿勢(アライメント)の改善
・動作パターンの改善
・ケガや故障の再発予防
には、いつまで経ってもたどり着けません。
本来の機能改善や姿勢改善、根本改善ピラティスで感じる疲労は、もう少し静かで、内側がじわっと変わっていくような種類の疲れです。
・深い呼吸が入りやすくなる
・立ち上がったときに、足裏や骨盤の安定感が増している
・首や肩の「いかにも頑張りました」「いい姿勢を作りました」というガチガチ感がない
そういった、小さな変化の積み重ねが、本当の意味での「姿勢改善ピラティス」「根本改善ピラティス」に近い状態だと思います。
では、どうすれば「頑張っているのに変わらない」状態から抜け出せるのか。
後編では、あまりにも急激な過去最大のピラティスブームと、それがもたらした“ペーパードライバー指導者”激増の現実、そしてグループとパーソナルをどう使い分ければ良いのかについて、もう少し踏み込んでお話しします。
