ロレッタブログ

ゼロリスクではなく、リスクを読み解く。添加物より現実に多い「食の安全」の盲点 - 2026.02.16

「食の安全の落とし穴」という本を読みました。実家は餅の製造業でしたし、友人には飲食のプロが多いので、こうした分野には関心が高いほうかもしれません。

私はほぼ3食自炊が叶う生活なので、調理パンや総菜を買うことも少なく、コンビニに寄ることもほぼない生活です。抑々自分で作る味が好きなのです。
それでも現実として、完全に「添加物ゼロ」で暮らすのは不可能ですし、そもそも添加物には“必要だから入っている”ものがあることも理解しています。


印象に残ったのは、食品安全を考えるときに欠かせない視点が、とてもクリアに整理されていたことでした。それが

「ハザード(危害要因・質)」と「リスク(起きうる確率・量や頻度)」を混同しない

という考え方です。


「毒か安全かは量で決まる」


医学者パラケルススの有名な言葉ですが、これは水でも塩でも醤油でも同じ。量を間違えれば命にかかわります。1リットルの醤油を一気飲みすれば昏睡状態になる。水も1時間で4リットル飲めば危ないでしょう。腎臓病や高齢者は少量でもより危険です。
つまり「良い・悪い」を二択で決めるのではなく、どのくらい、どの頻度で、どんな状態で摂るかまで含めて判断しないと、現実の安全性には近づけないということです。

「ゼロリスクを求める感情は気持ちできます。けれど、こだわり過ぎると失うものが大きい。」

私はこの一文に強く頷きました。
安全に敏感な方ほど、視野が狭くなりやすいのも事実です。「不安を減らすために始めたこと」が、いつの間にか行動を縛り、暮らしの自由度を下げてしまう。感情に振り回され、知識が欠落したままでは、QOL自体が低下してしまうのです。これがいちばん勿体ない。


天然=安全、オーガニック=無条件に安全、でもありません。

自然のままの環境で栽培することが安全を意味するのではなく、その環境が不潔であれば、そこで作られた食材は微生物などで汚染され得ます。オーガニックでも、栽培環境や保管・調理の過程が衛生的でなければ、安全性は担保できない。ここは誤解されやすいポイントです。

そこで今回、とても参考になったのが食品安全委員会の資料でした。
食品安全委員会はBSE(牛海綿状脳症)の発生をきっかけに2003年に発足し、厚労省や農水省など“実務を担う行政機関(リスク管理)”から独立して、科学的にリスク評価を行う機関です。食品業界に忖度する必要がない、というより「構造として忖度が起きにくい」ことが最大の強みだと感じます。

👉日本の食品安全を守るために 食品安全協会の20年


私たちが「添加物」よりも先に意識すべき現実的なリスク

結論から言えば、添加物の有無よりも、食中毒のほうが“現に起きているリスク”として非常に大きい。
件数で多いのはアニサキス、カンピロバクター、ノロウイルスなど。特にカンピロバクターは、重症化や合併症につながることもあり侮れません。食中毒を避けるために「肉の生食を避ける」「十分に加熱する」「調理前・食事前・トイレ後の手洗いを徹底する」など、当たり前の習慣がここでも強い味方になります。

面白いのは、コロナ禍で食中毒の発生が減ったという報告があることです。
外食機会の減少だけでなく、手洗いの徹底や消毒、調理器具の衛生管理が“結果として効いた”可能性がある。つまり、安全は「特別な何か」ではなく、習慣の質で積み上がるということです。これは、安全を健康と言い換えても成立しますね。

もう一つ、とても示唆的だったのが2015年の食品安全委員会によるアンケート結果です。
一般消費者に「がんの原因になると思うもの」を尋ねると、食品添加物や残留農薬が上位に挙がりました。一方で、食品安全の専門家はタバコを圧倒的に重く見ており、添加物や残留農薬は相対的に低い評価でした。
また「健康への影響で気を付けるべき項目」の順位でも、専門家はタバコ、偏食・過食、飲酒、健康食品・サプリメントなどを上位に置き、一般消費者の“気にしどころ”とズレが見られます。

このズレは、一般の方が悪いという話ではありません。
情報が多すぎる今、目に入るものほど不安が増幅されやすいだけです。だからこそ「ハザード」と「リスク」を切り分けて、危険要因の存在と、実際に起きる確率を混同しないこと。
リスクは、ハザード(質)に加えて、どれだけ曝露するか(量・頻度)で決まる。ここを自分の思考の柱にすると、振り回されにくくなります。


この考え方は、食品だけではなく、スキンケアや日々の暮らしにもそのまま当てはまる

たとえば化粧品。

天然か合成かは、安全性とイコールではありません。

これまでも、私はプロのエステティシャンとして、お客様には明確にお伝えしてきています。むしろ「肌に長時間のせるもの」ほど、品質管理や不純物管理が重要になります。
オリーブオイルの“オリ”のような濁りは、食材なら風味として楽しめますが、それをそのまま皮膚に塗るのは別問題。不純物が混在したまま肌にのることで、刺激やトラブルにつながる可能性があります。食品を皮膚に直接塗付することで、アレルゲンが皮膚を通じて体内に入ると、アレルギー発症に繋がる事もあります。食べ物は食べ物であり、化粧品は化粧品です。用途を混在しないこと。

紫外線も同じです。
シミを作りたくない、老化したくないからといって、1日中ブラインドを閉め、日光を徹底的に避けていれば、運動不足になり、日光曝露が減ることでビタミンD生成が不十分になる可能性も出てきます。体内時計の観点でも、脳の健康においても、光を浴びない生活は好ましくありません。

どんな選択も、リスクとベネフィットのトレードオフです。
だからこそ、正しい知識は「我慢の材料」ではなく、「選び直す力」になります。


最後に。
食の安全を考えるとき、私がいちばん大切だと思ったのは、怖がることよりも、優先順位を正しくすることでした。

添加物をゼロに近づけるより先に、やるべきことはある。
生肉は避ける。加熱を徹底する。手洗いを習慣にする。交差汚染を起こさない。
そして生活習慣(偏食・過食、飲酒、サプリの扱い、喫煙)も含めて、“大きいリスク”から順に整える。

食品安全委員会の資料は、まさにそのための「地に足のついた基礎」を与えてくれると感じました。
食への意識が高い方ほど、一度立ち止まって、ぜひ目を通してみてほしいです。ゼロリスクのために生活を削るのではなく、現実的に安全性を積み上げるために。

下記に、お子さん向けの資料も添付しますね。中学校の技術・家庭科用教材のPDFだそうです。自分が中学生の頃にもこんな資料があったかなあ・・・はるか昔過ぎて憶えていません💦。

(注)本記事は一般的な情報整理であり、個別の診断や治療を目的としたものではありません。気になる症状がある場合は医療機関へご相談ください。