EUがビタミンA濃度を規制した理由──“危険”だからではありません - 2026.02.27

エンビロンより、EU化粧品規則改正(Commission Regulation (EU) 2024/996)に伴う一部処方変更のお知らせがありました。
「ビタミンAが規制された」と聞くと、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、今回の規制はビタミンAが“危険”と判断されたわけではありません。
EUが行ったのは、予防原則に基づく“総曝露量の管理”です。
ここを正確に理解することは、スキンケアを感情ではなく構造で捉えるうえで、とても大切です。
EU規制の本質は「累積管理」
今回の改正は、EUの独立科学機関であるScientific Committee on Consumer Safety(SCCS)のリスク評価に基づいています。
SCCSが検討したのは、ビタミンAそのものの危険性ではなく、
・食事
・サプリメント
・化粧品
これらを合算した「総ビタミンA曝露量」です。
ビタミンAは脂溶性で体内に蓄積される性質があります。
そのため、長期的に上限を超えた摂取が続くことは望ましくありません。
EUは「問題が起きたから制限する」のではなく、「理論上の過剰曝露を未然に防ぐ」ために上限設定を行いました。
これは“禁止”ではなく、“設計の調整”です。
なぜ今、規制が行われたのか
ここ数年、レチノイド市場は世界的に拡大しました。
・高濃度レチノール製品の増加
・“攻めのケア”が正義になりやすい市場空気
・SNSを介した自己判断使用の拡大
・医療・コスメ領域をまたぐレチノイド活用の一般化
近年は「効果=濃度」という単純化が起きやすく、レチノイドも“高ければ高いほど良い”という理解で語られる場面が増えました。
しかし本来は、肌質・炎症反応・季節・併用成分・生活背景まで含めて設計しないと、結果が出る前にバリア機能の破綻や継続困難を招きやすい成分です。
EUは医薬品を直接規制したわけではありません。
ですが、社会全体でのビタミンA曝露量の増加という流れを踏まえ、「総曝露量」という視点で管理を行ったと考えられます。
これは“成分否定”ではなく、“社会設計”です。
エンビロンの対応
今回の処方変更においても、
・国際単位(IU)は維持
・Vitamin STEP-UP SYSTEMの思想は維持
・使用感やテクスチャーは従来通り
と説明されています。
濃度の絶対値競争ではなく、段階的適応によって肌を育てる。
このエンビロンの根幹となる思想は、今回のEU規制とも矛盾していません。
むしろ「高濃度競争」に対するブレーキがかかった今こそ、エンビロンの段階設計の意味がより明確になったとも言えます。
科学的背景を確認したい方へ
ビタミンAの過剰摂取に関する研究は、主に経口摂取を対象に行われています。
以下は参考となる論文です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20374604/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33098193/
これらは化粧品使用を直接対象としたものではありませんが、EUが「総曝露量」という概念を重視した背景理解の一助になります。
興味のある方は原文をご確認ください。
Lorettaとしての立場
私は、成分を恐れる立場でも、
無条件に礼賛する立場でもありません。
大切なのは、
・科学的根拠
・規制背景
・政策思想
・累積リスクの構造
を理解したうえで、冷静に選択することです。
「強さ」よりも「設計」。
「刺激」よりも「継続」。
「濃度」よりも「適応」。
美しくあるために必要なのは、無茶や無謀さではなく、理解するインテリジェンス。
健康であるために必要なのは、勢いではなく、長期的なビジョンと冷静な判断です。
肌は競争ではなく、積み上げで変わります。
EU規制は、そのことを改めて示した出来事だと思います。
これからも私は、感情や流行に流されず、不安をあおるような短期的な売り上げ訴求とは距離を置き続けます。
構造と根拠に基づき、長期的に健康と美を育むための、地に足のついた情報発信を続けていきます。
C-クエンスシリーズの処方アップデートについて
今回のEU規制対応に伴い、エンビロンは一部製品のビタミンA誘導体の設計を見直し、順次処方を切り替えていく方針です。
重要なのは「効果を落とすための変更」ではなく、グローバル基準に合わせながら、これまでの使用感と品質、そして安定供給を維持するための調整である点です。
なお日本では、化粧品に配合されるビタミンA誘導体の濃度に関してEUほど明確な上限が設定されていない領域もありますが、エンビロンは国や地域ごとの差を理由に基準を下げず、EU規制に整合する処方へ段階的に移行するとしています。
対象となるのは、C-クエンスセラム 4プラス、C-クエンスクリーム プラスです。
処方設計上は、ビタミンA誘導体の選択を見直しつつ、肌へのなじみやすさ(耐容性)と安定性のバランスを取り、ステップアップシステムの思想を保つ方向で調整が行われます。
