ロレッタブログ

金子國義の世界 - 2015.07.26

今年3月16日にお亡くなりになった金子國義さん。昨年は絵を購入しようと思い立ち、美術倶楽部Higurashiのサイトをチェックしていたのでした。店舗は変わらず営業しているようですから、今夏のうちに訪れたい。

今年1月に自叙伝「美貌帖」が河出書房新社から発売され、熟読していた矢先の死はなおさらショックでした。
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ユリイカ臨時増刊号をすぐ読んだのは言うまでもない。
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ぜひ2008年に平凡社から刊行された「金子國義の世界」の写真や解説をじっくり読んでから「美貌帖」を読むことをお勧めします。ヴィスコンティやジュディ・ガーランド、ジーン・シュリンプトンなど50~60年代アート好きにはたまらない!
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画家・金子國義。彼の自宅を訪れた者はその独特の世界観に一様に驚く。

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美貌帖 / 河出書房新社 / 金子國義 

モデルと一対一で向き合っていると、その人の全てが見えてくる。普段どんな生活をしているのか、譬えは悪いがパック入りのお弁当を食べている様子が透けて見えたりすると、ちょっと遠慮したくなる。
僕がモデルに求めるのは、決して日常的でない洗練された表情だ。いいモデルは、その場をとりまくエネルギーを一瞬にして凝縮してしまう緊張感を持っている。いつもは隠していてもふとそれを垣間見せた時、普段のその人を越えた何者かになれることが大切なのである。『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルなどは、可愛い子を見つける天才だったと思う。彼は、どんな格好をしても可愛く、何をやっても魅力的で、いろいろなタイプになれる素質をもっている少女を次から次へを見つけ出した。
モデルというのは、素質がなくてはいけないと思う。それはもちろんう生まれながらにして備え持ったものだけれど、努力でみがかれることも確かにある。スーパーモデルたちはモデルクラブの方針で、優雅さを保つために毎日<マキシム>で食事をさせられるという話を聞いた。その昔バレエ・リュスの主翼を担い、ディアギレフなき後、芸術顧問としてその残党を指揮したボリス・コフノは、彼に師事したセルジュ・リファールをまず食事のレッスンから始めた、と語っている。美しさも初めにまず作法あり、というのは大いに共感するところで、僕もモデルには気が付けば食事の作法を教える。

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美しくないものを視界にいれるくらいならうつむいて雑草を見るというくだりが、なんとも。