ロレッタブログ

依存症治療とダイエットの手法は同じ<つづき1> - 2019.04.29

昨日のつづき。

脳にドーパミンやエンドルフィンが放出されると、鬱屈した気分を瞬時に高揚させられる。だから、お酒がはじめのうちは楽しいし、気分転換になるのもわかる。私も2年前までは自宅でワインを呑んでいたので、「今日も1日よく働いた!」と呑むお酒が美味しい気持ちはよくわかります。

しかし依存症者の場合は、高揚というよりもむしろその人にとっての虚しい現実から逃避するためにの飲酒と酩酊だと感じます。そして過緊張状態にある人ほど強力な刺激(鎮静)を求めやすい。しかし、急激な高揚、興奮、変化というものは、急な低下(抑うつ)ももたらしやすい。

軌道修正するタイミングのみつくろいかたについては、中井久夫先生のご著書から抜粋。(少年Aの精神鑑定医としても有名ですよね。)

まず、「酒やめました!」と言ったら「何日間?」と聞きます。「10日」と答えたら、「10日は10日の値打ち、20日は20日の値打ち」と自然な口調で言います。そして、「酒止めたというな。それを秘密にして誰かが気づいたときが正念場だ。きっと『酒を止めたか。おまえは意志が強い。この杯一杯を飲んでもまたやめられるだろう。俺の盃をうけてみい。オイ受けられんのか』という奴が必ず出てくる。その杯を受け取ればいままでの努力が消える。『オレはコメの酒は卒業した。茶の木の汁か果物の汁にする』と言えるかな」などと続けます。「あ、オレもそんなことを言って何人かを酒呑みにもどしちゃいました」と反省する人が少なくないですね。

アルコールなら何でもよく、ひたすら意識混濁を目指す人が治りにくいのはいたしかたないでしょう。そういう人にも私は言います。「50代か60代かわからないが、酒がきみを見放そうとするときがある。そのときが首尾よく見放されるか死ぬか、という最後のチャンスだ」と。また振戦せん妄は生命に関わりますが、患者の人生にとっては絶望ではなくむしろチャンスです。これを機に辞めた人を私は知っており、ドイツのシュルテ教授も書いています。よく登場する警官は本人の「良心」か、ネズミやゴキブリ、小人のたぐいは「劣等感」か、それはわからないけれども。

なお、以上は煙草をやめる場合にも当てはまります。付け加えるとすれば、二日目の夜の自律神経の嵐を薬物で切り抜けることと、一週間たつと落ち着きここで再開するのはもったいなくなることか。誘惑の悪魔役が出てくるのは酒と同じ。メリットは口の中が古手袋状態から解放されること。一年目に吸ったタバコはまだうまく、二年目にようやくまずくなります。タバコをやめるのはむこう2週間は平穏が見込まれるときがよいでしょう。何度失敗してもよく、そのうち取り掛かるのによいタイミングというものがなんとなくわかってきます

シリーズ ケアをひらく こんなとき私はどうしてきたか/医学書院

自然な口調っていいですね。褒めや高評価に飢えているタイプにそれをやるとよろしくない。

これは個人的な意見ですが、おそらく本来のストレス解消法は、ドーパミンやエンドルフィンの分泌を促す方向よりも、セロトニンの分泌を促す方向にシフトしたほうが、心身により好ましいのではないかと思います。
マッサージも、本当はそういう時こそ柔らかいタッチのものほうがよいのです。

だからロレッタでは圧の強弱はフェイシャルもボディも自由自在に調整できますし、過緊張、不眠、自律神経失調気味のかたにとってもお勧めのMLDマニュアルリンパドレナージも設けているのですよ。

そもそも享楽や快楽は「たまに」だからこそ楽しいわけで、頻繁であればあるほど、本来の心躍るような高揚やときめきの恩恵は色褪せてしまいます。しかも恐ろしいことに、人は良い変化のほうに早く慣れるようにできてるらしい(なんて贅沢な性質!)。10代の頃なら未体験で憧れだった素敵なものや美味しいものや楽しい体験も「飽きた」「なんだか最近つまらない」「またこれ」なんてすぐぼやくわけ。 しかしこれは頻回に経験できるだけの経済力がついたというだけで、自助努力せずに与えられたものにブーたれるようでは子供と変わらない。大人なら自分で楽しみを長く続かせる工夫をしたいものです。

こういう仕組みで、薬物や甘いもの、油っぽい物などおいしいという快感や快楽を与える物質は、同じ量を摂取しても快感の度合いは小さくなっていくのだそう。ギャンブルも買い物依存も同じ理屈でしょうね。だから依存症者は刺激を求めて量や回数や金額を増していくことになるのだとか。

ちなみに、ラットの実験ではコカインよりも甘味のほうがより脳内の報酬系を刺激するという結果が出ているのだとか。つまり白砂糖はコカインよりも依存性が高い。甘味料入りの炭酸飲料を1杯のつもりが何杯も飲んでしまう、ケーキも1個のつもりが2個3個・・・という過剰摂取も依存同様なのだとか。食品における精製という工程は糖や油や依存物質を濃縮した状態ですものね。お酒も薬物も甘いものも、こうやって心身をじわりじわりと侵していくのですね。

ではどうするとよいか?つづきは明日。