ロレッタブログ

大人の女が美しい - 2012.01.19

ずっと昔から読みたいと思っていたのですが、意外と本屋に置いていなくて、そのまま忘れかけていたある日発見!!どうやら2011年に文庫が新装で再発されたようです。
セツ・モードセミナーの生みの親、長沢節さんの名著。
30年も昔の言葉とは思えないほど、いまでも鮮烈。
ちなみに、名前ではわかりづらいかもしれませんが、節さんは大正6年生まれの男性。
生涯独身を通し、美と自由と孤独を愛した「粋人」が具象化されたような人。
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長沢節 / 大人の女が美しい / 草思社

あなたは自分の短い脚や小さい目やだんごっ鼻をたぶん前から気にしていた。この三つの欠点がなかったらどんなに幸せになれるだろうかと想像もした。だからいかに脚を長く見せるか、いかに目を大きく描くか、そして少しでも鼻を高くしようとお白粉をたたく。そういう努力を私は否定もしないし笑いもしないけれど、あなたにはその三つの欠点のほかにも実は何十、あるいは何百という自分ではちっとも気づいていないたくさんの美点もあるのである。それをみつけてくれるのは自分ではなくてあくまでも他人だということ、それを考えたことがありますか。
人の全体をもし点で分解したとすれば、おそらく何百、何千どころか何億にしてもまだ足りないくらいかもしれない。その一つひとつが自分の知らないうちに他人を引き寄せたり引き離したりしているのだから、自分ではさっぱりワケが分らないというほうが現実だ。この現実の力を私は「点の力」とも、ちょっとしゃれて「パート・ラヴ」とも呼んだことがある。
人と人とは必ずどこか相手の美しい一点でつながる。決して全体をくまなく調べ上げてから惚れるわけではないようだ。