醜形恐怖症 Body dysmorphic disorder (BDD) - 2021.02.19
整形人口の増加の一因は、セルフィーブームとスマホのカメラ機能の進化だと思います。画像加工ソフトを使えば写真にうつる自分を自由自在に加工できるんですから。瞳を大きく、手足を長く、ウエストはもっとくびれさせて、肌色はもっと白く明るくすれば「こうやれば私はもっとかわいくなれるんだ」と当然おもうでしょう。価値判断の基準も定まらない10代20代がこの指先で思うままに操れる加工技術に慣れたら、そのうち衝動的に美容整形に飛びつくのは簡単に予想ができます。そんなの画像加工ソフトとセルフィーが流行った時点で予想済みの展開です。
整形ジプシーと化しやすい醜形恐怖症の患者は女性が多いように思われがちですが、私は近年の筋トレブームの過熱っぷりを思うと、男性にも確実に患者は増えているのではないかと考えています。たとえば、健康をリスクにさらすようなステロイドホルモン(テストステロン)を個人輸入してドーピングしたり、食事よりもプロテインを大量に摂取したり、社交に支障をきたすほど筋トレに異様なほどのめり込む、などなど。
日本は醜形恐怖症は専門家が多くない印象ですが、第一人者は鍋田 恭孝先生かと。サロンには先生のご著書が2冊あるので、ご興味のある方は是非どうぞ。
エステには「誰にも見えてなさそうな毛穴やシミを異常に気にする人」などもたまに来店しますが、よくて半年続けばいいほうかな、という印象です。その多くの来店パターンは、3か月ぐらいガーっと通って、パッと消えていく感じです。だから、やっぱりなんでも視野狭窄で猪突猛進的に過剰なのだと思う。拒食症の人もこの来店パターンが多いです。主治医と話すよりもうちのサロンの方が好きでいてくれるのはありがたいのですが、通院さぼらないでちゃんと行こうね。
醜形恐怖症は自意識の病なので、自己ベストのために根気よくコツコツ手入れを続けていくエステやスキンケアよりも、最近なら「手っ取り早く自分ではない何者かになる手段」として美容整形に走る割合の方が増加しているかもしれません。最近は整形もカジュアル化しているので、増加どころか激増中だろうな・・・。
思春期に発症して、30代ぐらいになると症状が落ち着いていく人が多いそうですが、これは人生経験を積んだり物の見方の偏りが修正されていくからなのかもしれません。第一、誰にも見えないような毛穴だのシミだの小じわだのに来る日も来る日も一喜一憂しつづけるのも体力がいります。ですから、老化で体力が低下して小さなこといちいち騒ぐエネルギーがなくなる・・・ということなのかもしれません。こういうタイプの人にとっては、加齢や老化も悪い現象ではないのかも。
→〇ハートクリニック こころのはなし 醜形恐怖症 25歳女性