ロレッタブログ

君は(依存症者だけど)診てあげよう - 2022.06.27

コラムニストの小田嶋隆さんがお亡くなりになりましたね。脳梗塞で衰弱されて、相当痩せていたけれど、合併症か他のご病気もあったのでしょうか。ツイッターで入退院を繰り返しているような印象を受けていたので、心配をしていましたが・・・ご冥福をお祈りいたします。


数年前のブログでは、小田嶋さんの著書「上を向いてアルコール」をご紹介したことありました。

小田嶋さんは若い時にアルコール依存症になり、精神科を受診したそうなのですが、偶然にもそのクリニックの医師はアル中の治療で有名な久里浜病院に勤務していたことがあったそうです。その当時にさんざん治らない患者を数多くみてきたそうで、「私は今まで散々勤務医時代にアル中をみてきた。その経験上、アル中は治らないから開業したら診ないと決めた」と小田嶋さんに告げたそうです。しかしさらに、「けど、君はインテリだから診てあげよう」ともおっしゃったそうです。

おそらくこの主治医の言葉だけを読んでも、依存症との決別になぜインテリであるかどうが影響するのか、その意味がよく分からない方が多いかもしれないけれど、私は膝が割れそうなぐらい激しく膝を連打しました!!いやこれ、けだし名言ですよ!!!

アルコール依存症の治療は、結局のところ完全な断酒なんです。金輪際一滴も口にしないということ。高糖質高脂質の食べ物、アルコール、ショッピング、スマホ、ギャンブル、占い、タバコなど、依存物質や依存行為は多種多様ですが、それらを完全に断つということは、完全に新しいライフスタイルを構築するということなんですよ。それまで依存対象が占めていた、インスタントで享楽的に自己愛を満たせる時間や空間やお金の使い方、そしてそれにまつわる人間関係も、一切合切全て変える必要があるんです。

はっきりいって、これは自分の頭で考えたり内省が不得手な人にはできません。そもそも現代人は情報という刺激に対するインスタントな「反応」を繰り返していることの方が多くて、「自分の頭で考える」ことをすっかり忘れている人の方が圧倒的多数だと思います。依存物質に浸食され続けた脳に、これだけドラスティックな負荷が新たに与えられながら、それに抗いたい欲求は限りなく強くて、しかしやり遂げるのも本人しかいません。これは知性のない人には不可能なんです。

小田嶋さんもこんな風に記していました。

アルコールをやめるということは、単に我慢し続けるとか、忍耐を一生続けるという話ではない。酒をやめるためには、酒に関わってきた生活を意識的に組み替えること。それは決意とか忍耐の問題ではなく、生活のプランニングを一からすべて組み替えるということで、それは知性のない人間にはできない、と。

でも実際やってみるとそうでしたよ。だって、酒がない人生を一から設計し直す作業というのは、実際問題としてえらく人工的な営為じゃないですか。とにかく自然に振る舞っていると飲んじゃうわけです。

つまり、「あなたはインテリだから、これを機に依存対象に変わる喜びや知的好奇心を満たすのを自分で見つけ出して、それらとともに生きていくスキルと新しいライフスタイルも獲得することができるでしょう。これができない人は依存対象と縁を切ることができないので、生涯依存症者のままです。」ということなんです。

小田嶋さんがアル中だったのが20代~30代だったので、脱却に成功できたのかもしれません。アルコール依存症患者の平均寿命は52歳。40代になってからの依存症脱却は、正直なかなか難しいと思います。