体は全体で支え合う - 2024.03.26
人間の体は新しいパーツに取り換えられる部位は少ないです。そのためには、ある一定の部位だけに極端に偏ったストレスやダメージを与えるような使い方を避けて、「バランスよく動かすこと」が必要だといえます。じゃあこのバランスよく動かすってどういうことでしょう?
体を動かすときに筋肉や関節などの部位をざっくり4つに分類するとこんな感じじゃないでしょうか。
- 正しく使えている
- 使い過ぎている
- 使えているが使い方が間違っている
- 使わなさ過ぎ
この4つの差を全身で極力減らすことが「バランスよく体を使うこと」だと思います。私たちの日常動作や日中の行動は、ある程度ルーティンがあり、必然的に動きのバリエーションが限られることがほとんどです。ですから、意識的に動きのバリエーションを増やすことがとても大切になってきます。
特に重要なのは、特に劣化の進行が早い(2)使いすぎている、(3)使えているが使い方が間違っている、(4)使わなさ過ぎ、の部位の動作改善を目的としたうえで、動きのバリエーションを段階的に徐々に増やしていく必要があるということです。なぜならば、本人にとって全然難しくもない、実にシンプルで単純な動作の時点で致命的なエラーが起きているケースが大半だからです。ですから、最初から複雑なアクロバティックな動作をやらないことがコツです。(←たまにやるとそれはそれで面白かったり楽しいのもわかるのですが。💦)ですから、特に(3)と(4)にフォーカスして正しく使えるようにするだけで、体は確実に変わります。
腰痛や、膝、肩、手首、腰などの関節痛などは、車で頻繁に急発進や急停車をしたり、無茶な運転でカーブを曲がったりしてきた結果、一部の部品に極端な負荷がかかり続けて、経年で部品が摩耗したり壊れてしまった状態です。正しい運転技術の基礎を地道に徹底的に習得しなおす「やりなおし」が、大変重要です。これが、私がピラティスを車の運転に例えて「自己流で習得して全身に染みついたミスドライビングテクニックを、もう一度教習所に通いなおして再習得しなおすようなもの」と述べる理由の1つです。
また、たとえ注意して長く丁寧に車を扱い乗ってきたつもりでも、長距離を走行したり何年も使っていると、様々な部品が傷んだり、壊れたりすることもあるでしょう。もしかすると、走る道路の特性上、特に摩耗しやすい部品もあるかもしれません。
人間の身体も同じで、仕事や家事で日常に反復的に要求される動作は誰しもありますし、筋肉だけではなく関節を構成する腱や靭帯、半月板、椎間板などと言った部品も、経年でどうしても硬くなったり薄くなったり、弱化します。また、遅筋と速筋という2種類の筋肉を比較した場合では、じっくりゆっくりスローに動く遅筋よりも、素早い動作を担う速筋のほうが加齢による衰えが早いと言われています。
また、人の身体を構成する視力・聴覚・触覚・温感などの感受性や反応速度も低下します。 機械受容器感覚やバランス能力も低下します。全身の細胞の栄養や酸素供給を担う心血管系はもちろん、栄養素を吸収する、あるいは不要なものを解毒するなどを担うその他の内臓も同様に重要です。内部と外部からの刺激を感受しあいながら、私たちが生涯でたった一台しか乗ることができない車=「体」という全てのシステムが支え合って成立しています。
つまり、私たちが「体力が落ちた」と感じた時は、決して筋肉だけが弱くなっているわけではなく、おそらく「体」というシステムを支え合う全機能も低下していると考えた方がよいでしょう。この弱化や衰退という現象は、いずれ必ず死ぬ動物である人間の当たり前の道のりで不可避です。しかし、この機能低下の速度が加速するか緩やかかの違いは、車と同じく、常日頃から持ち主が自分をどのように扱い、メンテナンスをしてきたの違いだとも思います。