中井先生の著作 - 2022.09.05
先月は、著書を愛読していた精神科医の中井久夫先生が亡くなり、とても残念です。インタビューから推測するに、脚の調子が思わしくないような印象があったのでご高齢なこともあり、おそらく施設にいらっしゃるのかもとは想像していたのですが。
阪神・淡路大震災直後の被災地で、中井先生は精神科救急のトップとして全国から集まった医療関係者やボランティアの調整にあたっていたそうです。今では多くの人が知っているPTSDという言葉も、阪神淡路大震災を機に認知度が高まったように思います。被災地での逡巡や気づき、そして精神科患者の人々の苦難を記した著書「災害がほんとうに襲った時」は、かなり昔ブログに記したことがあります。東日本大震災の直後にみすず書房から緊急出版され、さらに当時は最相葉月さんの提案により電子データも無償頒布されました。最相さんの無償配布の提案に対して中井先生は即快されたのだそうです。想定外の災害に見舞われることは誰にとっても無縁ではなく、この本はとても普遍的なテーマを扱っていると思うので、ぜひ多くの人に読んでいただきたいです。
現在は閉館してしまった近所にあった図書館でこの本を見つけたときは、「どうしてまたこんなマニアックな本が・・・!」と驚きました。中野区の近所のどなたかがリクエストされたのでしょうか。(どんな人が借りているのかわからないようにな、謎の本とたまに遭遇する図書館でした)
神戸連続児童殺傷事件で少年Aの精神鑑定や遺族のケアにも携わったことは、あまり知られてないようですが。当時、調査官たちの希望もあり、中井先生に鑑定を依頼したところ、全ての予定をキャンセルして引き受けてくれたのだそうです。
色んな人を定点観測していると、深く同意する文章があちこちに見つかる著書の数々から、読みやすい内容のものがあるかな?とページをめくってみました。
親の愚痴を聞かされて育ったこともが、大人になってからメンタルを病む率は本当に高いと思います。子どもが子ども時代に子どもをやれなくて、代わりに自分の親の親の役割を引き受けてるんだからねえ・・・。親自身は過保護で育てたように思い込んでいるけれど、実は子どもはちっとも安心できぬまま育ってきていることに親も子ども自身も気づいていないパターンも、少なくないですよね。「保護されたいという親の思いが、子を保護しているという思い込みにすり替えられる、こういうすり替えは実よく起こるものだ。」
病人であることがまだしも幸せで、病気が治ればもっと苛酷な人生が待っている人もたくさんいる。頭痛がどんなものか知らない人たちが、軽躁状態で生きてきて、ある日脳卒中とか心不全とかも多すぎますよね。素晴らしい著書がたくさんあるので、ぜひ読んでみてください。
依存症治療とダイエットの手法は同じ<つづき1>
中井先生といえば
日時計の影