筋異形症 muscle dysmorphia - 2023.07.19
Women’s fitness specialistの勉強中に知った筋肉異形症。筋肉への執着が常軌を逸してしまい、ステロイド乱用の副作用で亡くなったらしい人のニュースが続いていますが「この精神障害症状の呼び名がちゃんとあるんだろうな」と予想していたところ、やはりありました。
Bigorexia(拒食症 Anorexia nervosaのもじり)、megarexia、reverse anorexiaなどとう別名もあるそうです。
筋肉異形症は身体醜形障害(BDD)の1つで、主に男性に多くみられたのですが、近年は女性にも増加中だそうです。確かに海外のコンテストのドキュメンタリー映像などを観ると、女性でもステロイド乱用者は珍しくないのかも・・・と感じずにはいられません。
筋異形症の定義は、脂肪の無い引き締まった体への過度の欲求と、自分の身体は貧弱で不十分だという思い込みにとらわれれている人、と定義されるそうです。その割合はなんと英国のジムではトレーニングしている男性の10人に1人がこの症状を抱えている可能性がある、と推定されるのだそうです。これ、ちょっと多くないですか?!
筋異形症の人が自分を鏡で見た時の脳内は、おそらく他のBDD患者と同様に一般人が鏡を見るときに働く脳の部位とは異なる脳の部位が働いてるのでしょう。BDDの患者の多くはモデルなど一般人よりはるかに美しい人がなりやすいし、筋異形症は明らかに筋肉が十二分に発達している人がなりやすいし、拒食症も元々痩せすぎなぐらい痩せている人がなりやすい。私には「何者かになりたい願望が強すぎて、凡庸な自分を受け入れられない病」という印象です。
個人的にはこの病名を知る前から、「過剰な筋発達に執着してステロイド乱用も厭わず、健康と社会生活に支障をきたすレベルで強迫的にトレーニングし続ける男性は男性版摂食障害みたいなものだから、思考の傾向はかなり拒食症に近いだろうな」と容易に推測していたのですが、実際にそのようです。ですから、前述した通り近年女性患者が増加しているのも個人的には全く理由以外でもなんでもなくて、むしろ想定内です。摂食障害の患者さんが次は筋異形症になるのも、共通して通底するものが「歪んだ自己像」なので、むしろ全く珍しくいない流れなんじゃないでしょうか。ただし、摂食障害の患者に筋トレは良いというリサーチもあるようですし、理論的にも脳内の神経伝達物質の再調整に役立つだろうとは思うのですが、それでもやっぱり元々の思考傾向ゆえに死に瀕するレベルで過剰にやる人も出てくるんですよね。
たとえばフィットネスジムならトレーナーや、エステサロンなら施術者が、美容外科なら医師がBDDの可能性に気づくでしょうから、医療機関への受診を薦めるべきと思いますが、BDDやその傾向のある人のコンプレックスを喰い物にする人の割合もそれなりにいるのが現実です。
筋異形症について知りたい方は、こちらをどうぞ。
筋醜形恐怖症の診断基準を再考する
Revisiting the Diagnostic Criteria for Muscle Dysmorphia
Stuart B. Murray, PhD1 and Timothy Baghurst, PhD2
The Redleaf Practice, Wahroonga, Sydney, New South Wales, Australia 2
Department of Health and Human Performance, Oklahoma State University, Stillwater, Oklaho様々な状況において、レジスタンストレーニングは、肯定的な自己イメージを促進するだけでなく(10)、筋力を高め、逞しい体格をつくり、総合的な健康をもたらす有益な活動とみなすことができる(8)。実際、治療的介入としての運動処方が様々な精神医学的症状に有効であることは、これまでの長い臨床経験から明らかにされている(9,38)。
ところが、レジスタンストレーニングを過度に行なうと、ボディイメージ障害に伴う一連の病的な症状を呈する場合がある(25)。このようなトレーニングと精神障害との関連性は、従来、有酸素性エクササイズと摂食障害との関係に限定されてきた。この場合、女性は達成不可能なレベルの痩身を渇望する(12)。
しかし近年の研究で、男性におけるボディイメージ障害の有病率が増加していることが明らかになった。その報告からは、6 歳という幼い年齢の少年を含め、子どもや成人が、現状の自己認識とはかけ離れた逞しい体格を切望していることが推定される(35)。
Steroid Nation | BBC Newsbeat
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